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  3. 人と人との結びつきよりも、ディスコミュニケーション、つまり「溝」の方への関心が強いんです。『よこがお』深田晃司監督【Director’s Interview Vol.35】
人と人との結びつきよりも、ディスコミュニケーション、つまり「溝」の方への関心が強いんです。『よこがお』深田晃司監督【Director’s Interview Vol.35】

人と人との結びつきよりも、ディスコミュニケーション、つまり「溝」の方への関心が強いんです。『よこがお』深田晃司監督【Director’s Interview Vol.35】

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50年後、100年後の観客に観てもらうためキャスティング



Q:キャスティングのことを伺いたいんですが、『よこがお』では池松さんが美容師を演じていますが、以前に『だれかの木琴』(16)でも中年女性にモテる美容師を演じていました。おそらく役どころが被っていると指摘されると思うんですが、そういう意見は気にならないですか?


深田:池松さんはあちこち出ていらっしゃるんでもちろん観ているんですけど、実は『だれかの木琴』は観てなかったんですよ。キャスティングしてから気付いた……。まあでも、知っていても「まあいいか」とお願いしていた気はしますね。


一番の基準は、直感的に映画にはめ込んだ時に、作品が豊かになりそうかどうか。その中でもいくつかの基準というか、役ごとのレイヤーがあると思っていて、この役にぴったりだと思ってキャスティングする場合もあれば、最初に脚本を書いた時のイメージとは違うんだけど、別の方向に面白くなりそうだと思って選ぶこともある。今回の池松さんは後者のパターンで、脚本を書いていた時はもっとチャラい若造みたいなイメージだったんです。もともと空っぽな若者にしようと思っていたけれど、あまりにも空っぽすぎて、過去編の市子のどんどん立場を失っていくというダイナミックな展開と比べると弱いんじゃないかという懸念もあった。そこに年齢詐称してるんじゃないかと疑うくらいに落ち着いた池松さんが入ってくれたおかげで(笑)、結構大人な雰囲気というか、落ち着いた強いトーンになったというのはありました。最初は、市子が空っぽな若者を振り回すみたいな感じだったんです。


Q:映画では、どっちが振り回しているのかわからない、みたいな印象でした。


深田:そう見えますよね。ふたりが並び立ってるような感じになってますよね。




Q:池松さんには「陰のあるナイーブな若者」というイメージがわりと根強くあって、そういうパブリックイメージみたいなものを映画に利用しようという意図はありましたか?


深田:ピーター・フォークにおける「刑事コロンボ」ぐらい、よほどのパブリックイメージでもなければ意識はしないですね。池松さんのキャスティングでもそれはありませんでしたし、自分としてはイケメンという前提で決めたわけでもないんですよ。


Q:深田監督には『海を駆ける』(18)でディーン・フジオカさんをキャスティングした時にも、後になって「あんなに人気がある人とは知らなかった」と驚いたという、無頓着伝説もありますよね。


深田:あの時は、本当にまんまと後になって知りました(笑)。でも、自分自身が映画ファンとして育った時に、観ていたのは古典ばかりだったんです。自分が映画を作る時にも、それこそ50年後、100年後に観られる作品を作りたいと思っていて、今の時点の池松さんやディーンさんのパブリックイメージは後世の人たちには関係がないし、それこそ自分の映画とも関係がないことだと思います。なんだかデカいことを言ってしまいましたね(笑)。



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編集・脚本・監督:深田晃司

1980年生まれ、東京都小金井市出身。大正大学文学部卒業。99年、映画美学校フィクションコースに入学、習作長編『椅子』など自主制作した後、05年、平田オリザが主宰する劇団「青年団」に演出部として入団。06年、19世紀フランスの小説家、バルザックの小説を深澤研のテンペラ画でアニメーション化した『ざくろ屋敷 バルザック「人間喜劇」より』を監督。08年、青年団の劇団員をキャストにオムニバス長編映画『東京人間喜劇』を公開。10年、『歓待』を発表。11年、第一回こまばアゴラ映画祭を企画・開催。12年、映画の多様性を創出するための互助組織、特定非営利活動法人独立映画鍋を有志数人と設立し現在、共同代表理事。13年、『ほとりの朔子』公開。15年、平田オリザ原作の『さようなら』公開。16年、『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査委員賞を受賞。17年、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。18年、インドネシアを舞台にした『海を駆ける』公開。同年、フランスで芸術文化勲章「シュバリエ」を受勲。作品のノヴェライズも手がけ、小説「淵に立つ」(16)、小説「海を駆ける」(18)に続き、「よこがお」(KADOKAWA刊)も書籍化されている。



取材・文: 村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。





『よこがお』

7月26日(金)より角川シネマ有楽町、テアトル新宿他全国公開

出演:筒井真理子/市川実日子 池松壮亮/須藤蓮 小川未祐/吹越満

脚本・監督:深田晃司  

配給:KADOKAWA  

【2019/111分/カラー/日本=フランス/5.1ch/ヨーロピアンビスタ】

公式サイト: yokogao-movie.jp

(c)2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS

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