ドキュメンタリー作家としての知識や経験をフィクションで使えることに興奮しました『プライベート・ウォー』マシュー・ハイネマン監督【Director’s Interview Vol.40】
現実と虚構が絡み合う現代映画の潮流に連なる作品
Q:本作の編集を担当した編集ニック・フェントンは、(実際に強盗事件を犯した本人へのインタビューを物語に組み込んだ)『アメリカン・アニマルズ』(18)の編集を手がけてもいますが、『プライベート・ウォー』もまた非現実と現実が絡み合う作品になっていることは興味深いです。このことは初めてフィクションに挑戦したあなたにとって、重要なことでしたか。
マシュー:もちろんです。ニックもドキュメンタリーとフィクションの両方を経験していて、それぞれの世界を知っています。本作での試みは、今までのドキュメンタリー的手法を私にとっての新しいメディアである劇映画に応用することでした。『アメリカン・アニマルズ』のバート・レイトン監督とも私は仲が良いですし、ニックに参加してもらうことは自然な選択でした。いい仕事をしてくれたと思っています。
Q:ポスト・トランプ以降、ドキュメンタリーとフィクションを交差させ、現実と虚構の境界線を曖昧にさせることで、リアリズムを追求する映画が増えてきている印象を受けます。現代における真実味をどのように感じますか。
マシュー:いま何がリアルなのかということは、すごく怖い状況になってきていると思います。ジャーナリズムの現在の状況も、フェイクニュースやサウンドバイト(キャッチーな見出し)に溢れている中で、人々が何がファクトで、何がフィクションなのか区別がしにくくなってきている、見極めることが難しくなってきていると思います。だからこそ、この映画を作りたかったし、メリーという人物を祝福したかったんです。彼女は真実のために戦った人物だから。
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監督/製作:マシュー・ハイネマン
1983年生まれ。ニューヨーク在住。05年にダートマス・カレッジを卒業し、09年に現代アメリカの若者を追ったドキュメンタリー『Our Time(日本未公開)』で長編監督デビュー。12年にアメリカの医療制度を描いた『Escape Fire: The Fight to Rescue American Healthcare(日本未公開)』はCNNで放映され、エミー賞候補に。メキシコ麻薬カルテルと自警団の戦いに密着した『カルテル・ランド』(15年)では、キャスリン・ビグローが製作総指揮に名を連ね、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネート。『ラッカは静かに虐殺されている』(17年)は、武装勢力ISIS(イスラム国)に支配されたシリア北部の惨状を世界に発信する市民ジャーナリスト集団に密着。全米監督組合賞(DGA)で2作連続ドキュメンタリー部門賞を受賞の快挙を果たした。麻薬問題を扱った5部構成のTVシリーズ「The Trade(日本未公開)」に続く、本作は彼にとって初の劇映画となる。
取材・文:常川拓也
「i-D Japan」「キネマ旬報」「Nobody」などでインタビューや作品評を執筆。はみ出し者映画を特集する上映イベント「サム・フリークス」にもコラムを寄稿。共著に『ネットフリックス大解剖』(DU BOOKS)。
『プライベート・ウォー』
9月13日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給 ポニーキャニオン
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