草なぎさんに当て書きされたキャラクター
Q:草なぎさん演じる小鉄は、人としてすごく小さくて最低の人間として描かれているのですが、最初から草なぎさんで当て書きされたそうですね。
市井:プロットをある程度書いた段階で、プロデューサーから草なぎさんのお名前をいただきました。確かに草なぎさんって小鉄にすごく合うんじゃないかって思いましたね。その後草なぎさんの出演が決まってから、いざシナリオを書き出したのですが、そこからはすごく筆が進みました。実はプロットを書いている時に結構煮詰まっていたのですが、草なぎさんと決まってから、明確に小鉄ってこの人なんだって、開けた感じがありましたね。まぁ、その時は小鉄って名前も決まってなかったんですけど(笑)。
親の名前が一鉄で、その子供が小鉄っていう、名前の通りすごく小さい人間をやって欲しかったので、あえて草なぎさんにそういう役をやってもらうのは、僕としてはすごく嬉しくて楽しみでした。色んなことをやってほしいなって、筆が進んだ感じはありますね。
Q:藤竜也さん演じる一鉄と小鉄との父子関係、小鉄と甲田まひるさん演じる娘ユズキとの父娘関係も興味深かったです。これもモデルにされたものなどはあったのでしょうか。
市井:そうですね。父と僕のちょっとした確執みたいなものは、そのまま活かしています。まぁ、お互いぶっきらぼうなんですよね。似た者同士なところはあると思うんですけどね。それが、一鉄と小鉄であり、小鉄とユズキであると思います。
Q:確かに一鉄と小鉄、小鉄とユズキの関係って、結構似ているものがありましたね。
市井:そもそも、この親子関係は似ていると書いてますしね。僕はそれぞれのキャラクターの設定資料を早い段階で役者さんにお渡しするんです。そこには、彼らがそれまで生きてきた過去の出来事を結構なボリュームで事細かに書いています。原稿用紙で6枚くらいですかね。役者のみなさんは、それを読んで現場に入ってくるので、もうそのキャラクターが皆さんの中に入っているんです。さっき言った、似た者同士みたいな事柄も、そこに書いていたと思います。
Q:ユズキ役の甲田まひるさんの存在感も素晴らしかったです。
市井:父役の草なぎさんと顔も似てるんですよね。
Q:そうなんですよ、すごく似てますよね。
市井:まひるちゃんって、目力がすごく良くって。父親の小鉄に歯向かっていくし、そういう、ツンケンした役がまひるちゃんにすごく合うんですよね。また、そんな子が笑うとすごく良いんです。現場でまひるちゃんを見ていると、実はこの映画は、ユズキ=まひるちゃんの映画なんだと思えてきたりもしました。とにかくまひるちゃんにすごく影響を受けましたね。