“揉めさせた”嬉しさ
Q:これだけ個性豊かな面々が一つの場所に揃って騒動を起こし、しかも全員がバランスよく出てくるので、まるで群像劇の様相を呈しているようでした。
市井:あんまり群像劇を撮っている意識はなかったんですけどね。僕はエチュード(即興芝居)がすごく好きで、役者さんとワークショップをやる時に、エチュードをやることが多いんです。お題として「何か“揉めている”様子をお芝居をしてください」って出すと、参加した役者さんが全員その場で揉め出すんですね(笑)。その揉めてケンカしてる様がすごく好きなんです。だから、同じ場所に大人数いるという意味では、“揉めさせた”っていう嬉しさがありましたね。
Q:一方で、行方不明になっている一鉄と妻の光子はここには絡んできません。二人のシーンは別に撮られたと思いますが、それぞれ演じられた藤竜也さんと榊原るみさんとはどうでしたか。
市井:藤さんと榊原さんは、存在がすごかったです。演出っていうのは役者がその役になるために、いかに引き出すことかと思うのですが、お二人に関しては、引き出すというよりも、一鉄と光子にしか見えないんですよね。本当に安心して見ていられました。
Q:藤さんは、脚本の面白さで出演を即決してくださったとか。また、撮影前にお一人で、現場のロケハンに行かれていたらしいですね。
市井:セットを組み込むために美術さんが現場に前乗りしてるんですが、その時に藤さんを見かけたそうなんです。しかもクランクインより全然前のタイミングなんですよ。その話を聞いたときは嘘だろ!って、かなり驚きましたね。もう本当に最高すぎますよね。