日本のアニメーションは、画がある程度出来上がってから声を収録する「アフレコ」で作られることが多い。一方『ごん』は、声を先に収録してアニメを後からつける「プレスコ」という方法で作られた。声にキャラクターの演技を当てていくので、アニメーションは声の演技に少なからず影響される。声優にとっては、完成の画が見えない状態で演技をしなければならず、難易度の高い収録と言えるだろう。
今回はキャラクターの個性を決定づける声の演出について、監督にインタビューした。
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青年の繊細さを表現する兵十役・入野自由
Q:アニメーションするにあたって、やはり声は重要でしょうか。
八代:そうですね。収録が行われるまでは、僕が吹き込んだ仮音声を頼りにアニメートするのですが、やはり役者の声が入った時点でキャラクターの人間味や温度が見えてきます。
Q:兵十役に入野自由さんを選んだ経緯を教えてください。
八代:原作で兵十の年齢はわからないのですが、絵本では、割とおじさんに描かれていることが多いですね。今回「ごん」ではあえて若い青年にしたいなと。声は、ちょっと青いナイーブさが欲しいと考えていました。それで、配給のエクスプローラーズジャパンの方の勧めもあり、入野さんに声をかけました。
※入野自由(いりの みゆ)日本の男性声優、俳優、歌手。代表作は『千と千尋の神隠し』ハク役、『キングダムハーツシリーズ』ソラ役、『おそ松さん』トド松役など。
Q:収録の感触を教えてください
八代:収録は比較的すんなりと進みました。入野さん自身がとても上手ですし、ちょっと語弊がある言い方になりますが、「声優っぽさ」をそんなに出さない方だったので、こちらから特に修正をお願いすることもなかったです。
Q:声優っぽさ、というのは?
八代:ちょっとオーバーめというか。アニメだからといって大げさに演技するのが、僕は好きじゃなくて。もしそういう演技しかして来なかった方とやると、どうしても収録が進まないこともあります。声優さんに「声優っぽくしないで下さい」と言うのも、随分と失礼なオーダーになってしまいますし。でも入野さんは、そういうのがない。というか、あえて出さないタイプの演技もできる方なんです。
声の演技って、声優さん自身の地声と遠い声になるほど、ちょっと「演技してる感」が強くなるんです。なので、地声が兵十の声のイメージと近い方を選んだのですが、彼自身、普段のお仕事も割と自然体でやっている感じがしました。