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『黒い十人の女』を甦らせた渋谷系映画とは?

(C) KADOKAWA 1961

『黒い十人の女』を甦らせた渋谷系映画とは?

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『黒い十人の女』あらすじ

テレビプロデューサーの風松吉(船越英二)には、美しい妻の双葉(山本富士子)がありながら9人の愛人がいた。妻と愛人、十人の女たちはお互いにその存在をそれとなく知っていたが、なぜか松吉から離れることができない。ある時、愛人の一人、女優の市子(岸恵子)と妻の松葉との間で松吉を殺害する計画が持ち上がる。それは鬱憤を晴らすための架空のものであったが、そのことを愛人の三輪子(宮城まり子)から聞いた松吉の心中は穏やかでない。思い悩んで妻の松葉に相談すると、彼女はあっさり計画を認める。そこで二人は、愛人たちを一堂に集め、その目の前で双葉が松吉をピストルで撃ち殺したように見せかける狂言殺人を企てる。。


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    忘れ去られていた『黒い十人の女』



     市川崑の全盛期と呼ばれる大映時代(1956~1964年)。『炎上』『』『野火』『おとうと』『私は二歳』『雪之丞変化』など、映画化困難に思えるような文芸作品から、育児書、モダン時代劇まで、映画にならないものはないとばかりに、あらゆる原作を妻で脚本家の和田夏十と共に、市川崑ならではの映画へと華麗なアレンジを施し、作り上げてきた。この時代の作品は、大部分がいち早くビデオ化されていたが、長らく観ることができなかったのが、『黒い十人の女』である。


     もっとも、今では『黒い十人の女』と言えば、テレビドラマとして市川崑がセルフリメイク(02年)し、続いてナイロン100℃によって舞台化(11年)され、さらに連続テレビドラマ化(16年)までされた定番の名作というイメージがあるが、ここ20年の間に名作として認知されるようになったにすぎない。1997年のリヴァイヴァル公開まで、知る人ぞ知る隠れた作品だった。


     とはいえ、1961年度の『キネマ旬報』ベストテンで第10位にランクインしているのだから、最初からカルト映画だったわけではない。ただし、当時のベストテンの慣習として、一度ベストテンの常連監督に仲間入りしてしまうと、ヘンな映画を撮っても、監督のネームバリューでランクインすることがあった。『黒い十人の女』が長らく名画座でも上映されず、ソフト化もされずに忘れ去られたのは、そうした理由があったのかも知れない。



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