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『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』ジョン・ヒューズの定義を更新したソーシャルメディア時代の学園映画

(c)2018 A24 DISTRIBUTION, LLC

『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』ジョン・ヒューズの定義を更新したソーシャルメディア時代の学園映画

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13歳の少女版『プライベート・ライアン』



 バーナムは、本作が、トレイ・エドワード・シュルツのデビュー作『クリシャ』(15)をはじめ、ジョン・カサヴェテスの『こわれゆく女』(74)やダーレン・アロノフスキーの『レスラー』(08)といった、主人公の視点で描かれた主観的な映画から影響を受けた作品であることを筆者のインタビューで認めている。


 「主人公が見るものしか観客は認知できない。主人公の心拍数と観客の心拍数を同期させたかったのです。だからケイラがいないところで父親(ジョシュ・ハミルトン)がひとりで何かをしている姿は出てきません。彼女とほかのみんながどのように触れ合っているのかしか描いていないのです。ある意味スヌーピーじゃないけど、親が話してるときは「モゴモゴ」と聞こえているぐらい主観的な映画にしたいと思いました」


 「この映画は、『プライベート・ライアン』(98)を主観的に、しかも13歳の女の子で描いたらどんなものになるのかという、試みだったと言えるかもしれません」



『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(c)2018 A24 DISTRIBUTION, LLC


 劇中、夕飯時に父親がケイラに話しかける場面があるが、両耳にイヤホンをして音楽を聴いている彼女にはその声は入ってこない。このように、バーナムは没入型のサウンドデザインを設計し、観客をケイラの精神状態で包み込むことを試みているのだ。


 あるいは、バーナムは、カトリーヌ・ブレイヤの『処女』(01)から、「主人公の内面や主観的な経験、肌で体感することが、そのまま映画のトーンとして観客に響く作られ方に影響を受けています」とも公言していた。


 『処女』は15歳と13歳の姉妹が処女を卒業しようとする姿を子どもに迎合せずにシリアスかつ冷酷に収めていたが、全体的なトーンは異なるものの、ケイラが憧れの男の子エイデン(ルーク・プラエル)の気を引くために、フェラチオの練習として嫌いなバナナを食べて気分が悪くなる状況を面白おかしく描いた場面があるように、本作もまた、思春期の興味と性的期待のプレッシャーを扱っていると言える。



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