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『Wの悲劇』はミステリーの名作が起源? タイトルのルーツをたどる楽しみ方 

『Wの悲劇』はミステリーの名作が起源? タイトルのルーツをたどる楽しみ方 


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「劇中劇」として使われた夏樹静子の原作



 薬師丸ひろ子が、舞台の上で渾身の演技をみせる。「私、おじい様を殺してしまった!」。そう彼女が叫んだ瞬間、舞台前方のフットライトが一斉に点灯し、ヴェルディの「怒りの日(「レクイエム」より)」が大音響で鳴り響く。


 「Wの悲劇」のクライマックスの見せ場。演出は蜷川幸雄……とは言っても、映画『Wの悲劇』の監督が蜷川ではない。主人公・三田静香が所属する劇団の公演「Wの悲劇」で、演出家を演じているのが蜷川幸雄なのだ。当然、舞台の演出にも彼のアイデアが取り入れられている。映画『Wの悲劇』は、劇中で上演される舞台と同じタイトルなのだ。


 この作品、一応、夏樹静子の「Wの悲劇」が原作になっているが、全体のストーリーはオリジナル。「劇中劇」である舞台の「Wの悲劇」が夏樹の原作を基にしている、というわけ。ちょっとばかりややこしい。その夏樹静子の「Wの悲劇」。タイトルを聞くだけで、ミステリーファンなら名作へのオマージュだとわかるはず。推理小説の大家として知られるエラリー・クイーンの「Xの悲劇」「Yの悲劇」「Zの悲劇」(もう一作の「レーン最後の事件」を加えて「悲劇四部作」を形成)を意識してつけられたタイトルだからだ。それぞれのアルファベットが作中で意味をもつように、夏樹の小説の「W」は「Woman(女性)」「Watsuji(主人公の名字・和辻)」を象徴している。


 夏樹静子は「Mの悲劇」という作品も書いたが、エラリー・クイーンと並ぶミステリーの大家、アガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」にオマージュを捧げた「そして誰かいなくなった」も書いている。こちらは設定もクリスティの作品に近い。「そして誰もいなくなった」といえば、2016年に藤原竜也主演のTVドラマも放映された。タイトルは「そして、誰もいなくなった」と「、」が追加されている。ストーリーはまったく関係ないが、こうしてタイトルのつながりを考えると、さまざまな方向に話題は広がっていく。


 ちなみにクリスティの「そして誰もいなくなった」は、1945年の、名匠ルネ・クレール監督作以来、何度も映画化されているが、なかなか傑作には至っていない。映画化が難しい題材であるためか……。タイトルに絡めてさらに突き詰めると、この作品、最初は「Ten Little Niggers(10人の黒人の少年)」だったのが、「Ten Little Indians(10人のインディアンの少年)」を経て、「And Then There Were None(そして誰もいなくなった)」と変遷した。「Nigger」「Indian」と、ともに人種差別的問題があったからだ(両方とも「人形」を指しているのだが)。




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