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『ブラック・スワン』俳優とダンスの究極の関係を考えさせる
スタント・ダブルならぬ「ダンス・ダブル」の名作は?
ダンサーを主人公に、この「ダブル」が大きな話題を呼んだ作品があった。1983年の『フラッシュダンス』だ。当時のダンスブームに乗って、それまでの映画と違うミュージック・ビデオ的な映像も多用。80年代カルチャーを代表する作品となり、ダンス映画として異例の大ヒットを記録した。溶接工として働くヒロインのアレックスが、プロのダンサーとしての夢に向かうストーリー。
主演に抜擢されたのは、ほぼ無名だったジェニファー・ビールスだった。この点が、すでにスターだった『ブラック・スワン』のナタリー・ポートマンとは大きく異なる。誰もが、ジェニファーの出現を、ダンスもできる美人スターの誕生だと思い込んでいた。
有名なクライマックスのオーディションや、中盤でバーのステージで踊るシーンは、アレックスの個性的なダンステクニックが映像にやきつけられている。そしてそのほとんどの部分で、ダンス・ダブルが使われていたという事実は、公開間際に広まり、映画ファンにショックを与えた(よく観れば、ダブルは一目瞭然だが……)。
メインでジェニファーのダブルを務めたのは、ダンサーのマリーン・ジャハン。その他、アクロバティックな部分も含め、男性を含めた計3人のダンサーがダブルを任され、ダンス映画史にも残る名シーンが完成された。ジャハンは当時、影武者ダンサーとして映画ファンから同情を受けることになる。それもこれも『フラッシュダンス』が大成功を収めたからで、その翌年に作られた『ストリート・オブ・ファイヤー』でジャハンは、顔がはっきりわかるダンサーの役に起用され、激しいダンスで観客を魅了した。