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『ポリーナ、私を踊る』目標を探し、アーティストは国境を超えていく

(C)2016 Everybody on Deck - TF1 Droits Audiovisuels - UCG Images - France 2 Cinema

『ポリーナ、私を踊る』目標を探し、アーティストは国境を超えていく

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『ポリーナ、私を踊る』あらすじ

--ロシア

4歳からバレエを始め、ボリショイ・バレエ団のバレリーナを夢見るロシア人の少女ポリーナ。貧しい家庭環境で育ちながらも、バレエへの情熱は人一倍強く、厳格な恩師ボジンスキーのもとで幼少の頃から鍛えられていた。その後、ボリショイのバレエ学校へ通うポリーナは、ひたすら練習を続け、将来有望なバレリーナへと成長。両親の金銭問題に悩まされつつも、憧れのボリショイ・バレエ団へのオーディションに無事合格し、フランス人ダンサーのアドリアンとも恋に落ちることに。ところが、入団を目前にしたある日、コンテンポラリーダンスとの出会いによって、運命が大きく変わろうとしていた。自分のなかに湧き上がる感情を抑えられなくなってしまったポリーナは、約束されていた輝かしいキャリアを投げ打ち、両親の反対を押し切ってアドリアンと南フランス(エクス・アン・プロヴァンス)のコンテンポラリーダンスカンパニーへ行くことを決意する。


--南フランス/エクス・アン・プロヴァンス

たどり着いた先では、著名な振付家のリリアによる厳しい指導のもと、これまでのスタイルと異なるダンスに戸惑いつつも、新たな挑戦へと立ち向かっていた。しかし、新天地で待ち受けていたのは夢と愛に葛藤する日々。気持ちばかりが空回りするポリーナは、ついに練習中に足に怪我を負ってしまい、いつしかアドリアンともすれ違うようになっていた。その後、怪我は回復するものの、美しいだけで何も感じられないダンスであることをリリアから指摘され、ついに役から外されてしまう。ダンスにも恋人にも見放され、すべてを失ったポリーナ。新たな居場所を求め、ベルギーのアントワープにひとり降り立っていた。


--ベルギー/アントワープ

自分の力だけで生きていくことを決めたポリーナは、オーディションや仕事探しに明け暮れる毎日。結果を出せないまま時間だけが過ぎていき、ホテル代すら払えない状況まで追い込まれてしまうことに。両親にも真実を伝えられず、どん底を経験したポリーナだったが、ようやくバーでのアルバイトが決まり、ふたたびダンスを始めることになる。そんなある日、偶然目に留まったのは、子どもたちにダンスを教えている舞踏家のカール。彼の即興的なダンスに刺激を受けたポリーナは、ようやく自分らしく踊ることの喜びを知るのだった。そして、カールからの提案で、振付家としてモンペリエ・フェスティバルへ2人で挑戦することになり、新たな一歩を踏み出すことに……。


Index


めぐまれた肉体の才能は軽々と国境を超える



 何かを表現するアーティストが、自分の作品を受け入れてくれる場所、あるいは、より表現活動がやりやすい場所を求めて、この世界のどこかへ移動するのは自然なことだろう。


 とくに言葉の壁があまり支障にならない分野、たとえば美術や音楽、パフォーミング・アーツなどでは、多くのアーティストが生まれ育った土地から異国へと活動の場を移し、新たな表現を開拓している。そのパフォーミング・アーツの分野での軽やかな「越境」を描いたのが、『ポリーナ、私を踊る』だ。


 この作品、「バンド・デシネ(フランスのグラフィック・ノベル=漫画)」を原作にしているという点もユニークだが、主人公のロシア人の少女、ポリーナが、自国の名門であるボリショイ・バレエ団のバレリーナをめざして鍛錬に励むも、オーディションに合格した後、クラシックバレエではないコンテンポラリー・ダンスに自分の将来を見出す。ロシアを離れ、南フランス、ベルギーへと移り住み、本当に表現したいダンスを追い求める姿が描かれていく。



『ポリーナ、私を踊る』(C)2016 Everybody on Deck - TF1 Droits Audiovisuels - UCG Images - France 2 Cinema


 作品を観ると、ポリーナが活動の場を求めて移動する様子が、あまりにも自由で驚くかもしれない。もちろん彼女の決断に反対する両親のエピソードなども描かれるのだが、自分の未来を自分で選ぶ強い信念があってこそ、アーティストとして成長できるのだと、今作は伝えているようだ。今年(2017年)、ダンスファンの間で大きな話題を呼んだドキュメンタリー映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』でも、希代のダンサーであるポルーニンが、祖国ウクライナから英国ロイヤル・バレエ団へと活動の場を移し、さらに自由を求めてさまよう姿が描かれた。


 日本人ダンサーたちの海外での活躍も日々、ニュースなどで報じられており、熊川哲也、吉田都といったロイヤル・バレエ団のプリンシパル(最高位ダンサー)まで登り詰めた才能も、母国にいたままでは花開かなかったかもしれない。


 『ポリーナ、私を踊る』では、移動することで達成させるアーティストの目標が、鮮やかに表現されているのだ。



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