
『ストリート・オブ・ファイヤー デジタル・リマスター版』瞬間的に最高の輝きを放ったキャスト、新たな地平を切り開いたキャスト
2018.07.24
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アクション映画のトップスターへの道が開けた…と思われたマイケル・パレ
映画ファンに長い間、鮮烈な記憶として刻まれる作品には、いくつもの理由が存在する。
1984年、映画雑誌「キネマ旬報」の読者選出外国映画で1位に輝いたのが、『ストリート・オブ・ファイヤー』。興行的には配収2億5,000万円(現在と同じ興収に換算すると約5億円)で、この年の洋画の26位。大ヒットしたわけではないのに、この栄誉は、公開当時、観た人に深く愛されたことの証明でもある。そしてこの作品、現在振り返ることで「輝き」を再認識できる部分も多い。それは普遍的なヒーロー物語だったり、音楽の魅力だったり、あるいはウォルター・ヒル監督による豪快なアクション演出だったりするのだが、時を経て『ストリート・オブ・ファイヤー』で改めて考えさせられるのは、演じたキャストの最高のきらめき、あるいは彼らが創造したキャラクターの革新性ではないだろうか。
公開当時、とくに注目を集めたのは、主人公トム・コーディを演じたマイケル・パレだった。西部劇のヒーローのように、愛した女を助けるためだけに町に戻ってくる男。言葉数は少ないが、敵を一瞬で倒す肉体技に、銃を構えるポーズのカッコよさ。そして豪快な動きとは裏腹の、よく見るとやや甘めのマスク。この作品以前には、ウィリアム・カット主演のTVシリーズ「 アメリカン・ヒーロー」のレギュラー出演くらいしか知られておらず、今作でまさに彗星の如く出現した新たなアクションスター。しかし、同年の主演作『 フィラデルフィア・エクスペリメント』が話題になったくらいで、パレはその後、トム・コーディを超える当たり役に巡り会うことはなかった。
翌1985年に凶悪犯の主人公を演じたSFアクション『Space Rage』は、『
プラネット・オブ・ファイヤー』なる邦題でビデオスルーの運命となり、1990年日本公開の主演作『
ストリート・オブ・ヒーロー』(原題は『Eddie and the Cruisers Ⅱ:Eddie Lives!』)ともども、『ストリート・オブ・ファイヤー』の栄光に頼るタイトルが続き、その効果も虚しくヒットには至らず……。
それでもマイケル・パレは地道にB級アクション映画などにコンスタントに出演を続け、大ヒット作とは縁がないものの今も俳優のキャリアは順調である。近年では『 リンカーン弁護士』での刑事役や、『 潜入者』のバリー・シール役(トム・クルーズ主演作も製作された、麻薬密輸にも手を染めた実在のパイロット)で、いぶし銀の脇役として活躍している。
じつは当初、トム・コーディを主人公にした3部作の企画が存在していた。しかし第1作『ストリート・オブ・ファイヤー』の全米での成績が芳しくなく、残り2作が製作されることはなかった。もし3部作でマイケル・パレが主演を続けたら、彼のその後の俳優人生も大きく変わったかもしれない。
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