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『シング・ストリート 未来へのうた』のジョン・カーニー監督が傑作『ザ・コミットメンツ』を意識した理由

© 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved

『シング・ストリート 未来へのうた』のジョン・カーニー監督が傑作『ザ・コミットメンツ』を意識した理由

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『シング・ストリート 未来へのうた』あらすじ

1985年、大不況のダブリン。人生の14年、どん底を迎えるコナー。父親の失業のせいで公立の荒れた学校に転校させられ、家では両親のけんかで家庭崩壊寸前。音楽狂いの兄と一緒に、隣国ロンドンのMVをテレビで見ている時だけがハッピーだ。ある日、街で見かけたラフィーナの大人びた美しさにひと目で心を打ちぬかれたコナーは、「僕のバンドのPVに出ない?」と口走る。慌ててバンドを組んだコナーは、無謀にもロンドンの音楽シーンを驚愕させるPVを撮ると決意、猛特訓&曲作りの日々が始まったー。


Index


アイルランドを舞台にした音楽映画の先駆的存在



 ジョン・カーニーが監督・脚本を務めた音楽映画3本のうち、『ONCE ダブリンの街角で』(2007)と『シング・ストリート 未来へのうた』(2016)は、彼自身が生まれ育ったダブリンを舞台にしている。今や世界の現役監督の中で屈指の音楽映画の作り手と目されるカーニーだが、アイルランドの音楽映画と言えば必ずタイトルが挙がる傑作がある。それが『ザ・コミットメンツ』(1991)だ。


 ダブリンに住む音楽好きの若者がメンバーを集めて編成したソウルバンド、ザ・コミットメンツの奮闘と挫折を描く同作はギネス世界記録によると、米国での興行収入約1500万ドルはアイルランド出資の映画として歴代1位。また、2005年にアイルランドで1万人以上が投票した「歴代最高のアイルランド映画」ランキングでも、堂々の1位を獲得している(ジェイムソン・ウイスキーが実施。


 ただし、カーニーは『シング・ストリート』のプロモーション時期に受けたインタビューの中で、こう論評している。


「『ザ・コミットメンツ』は素晴らしい脚本だったし、原作も実に愉快だが、問題は彼らがカバーを演奏していたこと。創造性はどこに行ったんだ? 僕らが学校でやっていたバンドだって曲を書いていたのに」(引用元:THE IRISH TIMES



『シング・ストリート 未来へのうた』© 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved


 このコメントは、自らバンド活動を経験したカーニーが、アイルランドを舞台にした音楽映画の先駆的な作品を強く意識していたことをうがわせる。そして実際、『ザ・コミットメンツ』には、「カバーかオリジナルか」という点以外にも、カーニーが意識せざるをえない要素がいくつもあるのだ。



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