まさかの上映禁止!?
本作はアメリカでは学内鑑賞用に使われることもよくある。2018年、マサチューセッツ州ボストン郊外の高校でも、冬休み前に上映予定だった。しかし突如として校長が上映禁止を発表する。理由は「文化的・人種的に配慮に欠けた見解がある」とのことだった。その発表を受けた学生たちの多くは「良い映画なのに…」と残念そうにコメントした。
確かにこの映画には、文化的・人種的に配慮を欠けた部分はある。公開当時から言われていたのが、東ドイツ出身者がステレオタイプな人種差別者的で悪役として描かれている点だ。また、ジャマイカの描写も陽気なラスタファリを強調している部分があり、こちらもステレオタイプだと言われていた。
そして本作は、白人の主人公が非白人のキャラクターを救うという、いわゆる「白人の救世主」映画でもある。コーチのアーヴィングによって、ボブスレーチームは導かれる。しかし、アーヴィングもまたジャマイカ・チームによって正しい道に導かれるのだ。
主演5人のバックグランドと絆
そのアーヴィングを演じたジョン・キャンディは、本作に出演前から知名度の高い俳優で、多くのスターを輩出しているコメディ劇団「セカンド・シティ」のトロント支部出身だ。カナダ向けテレビ番組『Second City Television』(76-84/日本未放映)にて人気者となった。同じセカンド・シティ出身で『サタデー・ナイト・ライブ』のレギュラーとして有名なジョン・ベルーシやダン・エイクロイド等と『ブルース・ブラザース』(80)や『大混乱』(88)などで幾度も共演している。
『ブルース・ブラザース』予告
本作でもコミカルなシーンでは、キャンディの真骨頂を発揮している。だが、公開直後の1994年に享年43歳という若さで他界したため、本作が生前に公開された最後の作品となった。
ジャマイカ代表4人のリーダー格となるデリースを演じたレオンは、歌手マドンナのミュージックビデオ『ライク・ア・プレイヤー』でイエス・キリストを演じ、アフリカ系アメリカ人であるレオンがその役を演じたことは、当時大きな論争を呼んだ。その後に出演した本作で、レオンはスターダムに乗り、主演俳優として大きな成長を遂げている。
マドンナ「ライク・ア・プレイヤー」PV
ユル役のマリク・ヨバとサンカ役のダグ・E・ダグは、ジャマイカにルーツを持っている。そしてダグ・E・ダグもスタンダップコメディアンとして活躍していたので、ジョン・キャンディ同様に本作ではコミカルなシーンを多く担当。この撮影中に5人は本作同様に友情を深めたようで、とりわけレオンとダグ・E・ダグは本物のジャマイカ代表だった選手と今でも食事に行っているようである。