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リズムを感じろ!『クール・ランニング』が未来に紡いだ偉大な一歩

(c)Photofest / Getty Images

リズムを感じろ!『クール・ランニング』が未来に紡いだ偉大な一歩

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『クール・ランニング』あらすじ

1987年のジャマイカ。デリース・バノックは、1988年ソウル五輪陸上男子100m走代表の最有力選手候補だった。しかし、その選考会で隣のレーンを走っていた選手の転倒に巻き込まれ、夏季オリンピック出場の夢は断たれてしまう。オリンピック出場の夢を諦められなかったデリースは、冬季五輪のボブスレー競技のことを知り「ボブスレーでオリンピックに出場する」というアイデアを思いつく。そして、元アメリカ人選手をコーチに招き練習を開始するのだったーー。


Index


ディズニーらしく”ありのままに”



 南国ジャマイカがボブスレーで冬季オリンピックを目指す、スポーツ・コメディ!ディズニーが製作の本作は、シリアスなスポ根ドラマになる筈だった。監督は何度か交代し、脚本も繰り返し書き直された。コメディ映画とはいえ、劇中では時々シリアス展開もあるので、その片鱗が伺えるだろう。


 ジャマイカと言えば、ウサイン・ボルトを代表にした短距離走が有名である。本作の主人公も、そんな花形である短距離走でオリンピック出場を目指していたが夢破れ、発想の転換でボブスレーでオリンピックを目指すことになる。本作は、1988年のカルガリー冬季オリンピックに出場したボブスレー代表たちの実話を元に描かれてはいるが、脚色された部分はかなり多い。


 また、この映画を機に、ボブスレーのジャマイカ代表は全世界で大フィーバーを巻き起こした。日本では1994年に劇場公開されたが、その4年後の1998年長野オリンピックでは、ジャマイカ代表が来日し、「あの『クール・ランニング』のジャマイカ代表が来日!」と、大きな話題となった。ここまで日本で受け入れられたのは、本作の分かりやすさに理由があるだろう。


 南国ジャマイカが冬季オリンピックに出場することの困難さや偏見、それらをバネにして仲間と共に超えていくスポ根ストーリー。また、ディズニー製作ゆえ子供向けにも作られており、全体的に非常に分かりやすい要素で本作は構成されている。


『クール・ランニング』予告


 描かれた4人の選手とコーチのそれぞれのキャラクターも親しみやすい。リーダーとなるデリース(レオン)は、ハンサムで父親が元短距離オリンピック代表。デリースの親友サンカ(ダグ・E・ダグ)は、陽気なラスタファリ(ジャマイカの宗教の信者)で、手押しカートレースではいつも優勝している才能の持ち主。デリースと同じ短距離選手選考会に出場していたジュニア(ロール・D・ルイス)は、父の威厳に怯え少々頼りない。やはり同じ短距離選手選考会に出場していたユル(マリク・ヨバ)は、常に高圧的で誰であろうとその態度は変えない意志の持ち主。コーチとなるアーヴィング(ジョン・キャンディ)は、ボブスレーの元アメリカ代表で有望な選手だったが、とあることがきっかけで、今はうだつがあがらない。


 分かりやすい設定でそれぞれのキャラが立っており、物語のテンポも早く、アッという間にボブスレーを始めて、アッという間にオリンピックまで辿りつく。子供も大人もだれることなく、集中して楽しむことができるのが特徴だ。


 また、サンカの2つの台詞「リズムを感じろ!ジャマイカ人らしくいること」とは、つまり「ありのままでいること」。同じディズニー制作の『アナと雪の女王』(13)の主題曲と同じだ。そういう視点からも、とてもディズニーらしい作品と言えるだろう。


『アナと雪の女王』主題曲


 また、『アナと雪の女王』同様に、音楽も話題になり、ジョニー・ナッシュの『アイ・キャン・シー・クリアリー・ナウ』をカバーしたジミー・クリフの曲は大ヒットとなった。そして劇中で何度か歌われる『ジャマイカン・ボブスレーディング・チャント』は、ユル役のマリク・ヨバがオーディションで即興で作って歌った曲がプロデューサーに気に入られ、劇中で使われている。



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