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『ロード・トゥ・パーディション』アカデミー賞監督サム・メンデスの辣腕が光るギャング映画の魅力

(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ロード・トゥ・パーディション』アカデミー賞監督サム・メンデスの辣腕が光るギャング映画の魅力

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日本のコミックにルーツを持つハードボイルド・ストーリー



 原作はマックス・アラン・コリンズが1998年に発表したグラフィックノベル。このコミックは小池一夫原作による日本の有名な漫画「子連れ狼」にインスパイアされ、つくられた。


「子連れ狼」は妻を殺され、職を失った凄腕の剣士が幼い息子を連れ、復讐の旅に出る時代劇。言うまでもなく、このキャラクターはサリヴァンと重なる。親子の絆を題材にしたハリウッド映画ではあるが感傷に溺れず、抑制が効いている点も同作の影響かもしれない。ハードボイルドな味の要因は、ここにある。


 映像もハードボイルドな世界をつくる大きな要素だ。夜のシーンが圧倒的に多く、昼の場面にしても『1917 命をかけた伝令』のような曇天が主体。色彩も淡いトーンで、『アメリカン・ビューティー』風の突き抜けるような明るさがない。しかし、それがこの物語のムードにピッタリとハマッている。禁酒法時代にくすんだノスタルジーを見出し、また裏社会という日陰の雰囲気を出す点でも、陰影の濃いこの映像スタイルは効果的だ。



『ロード・トゥ・パーディション』(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. 


 撮影を手がけたコンラッド・L・ホールは『明日に向って撃て』(69)でアカデミー賞撮影賞を受賞した大ベテラン。メンデスの『アメリカン・ビューティー』に続き、本作でも同賞の受賞を果たしたが、授賞式を待たずして、76歳で惜しまれつつ世を去った。以後、メンデス作品のほとんどは、ロジャー・ディーキンスが手がけることになる。彼もまた、『1917 命をかけた伝令』でアカデミー撮影賞を受賞したのは記憶に新しい。


 他にスタッフではトーマス・ニューマンもメンデス監督が信頼を置いている作曲家で、『アメリカン・ビューティー』から『1917 命をかけた伝令』まで、ほとんどの作品のスコアを手がけている。本作ではストリングスを基調とした、派手ではないが静かに情感を揺さぶる音楽を提供。主要登場人物がアイルランド系であることから、アイリッシュなアレンジも効かせ、ドラマに音楽を寄り添わせる。彼もまた、本作でアカデミー賞にノミネートを受けた。



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