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『1917 命をかけた伝令』計算しつくされたワンカットの「流れ」で、舞台劇のように感情移入させるアプローチ

『1917 命をかけた伝令』計算しつくされたワンカットの「流れ」で、舞台劇のように感情移入させるアプローチ


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徹底的にリアルなセットで、第一次世界大戦を再現



 アカデミー賞の作品賞では『パラサイト 半地下の家族』(19)に惜しくも敗れたが、ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ部門)や、PGA(全米製作者組合賞)、DGA(全米映画監督組合賞)の最高賞を獲得。間違いなく、2019年を代表する一本となった『1917 命をかけた伝令』。第一次世界大戦の戦地を、異様なレベルの臨場感、没入感で描く今作は、どこが高く評価されたのか? その理由はいくつもあるが、最大のポイントは、通信手段も発達していない当時の戦場を徹底して「アナログ」的映像で見せながら、全編ワンカットのために最新のテクノロジーも駆使した点だろう。


 アナログという側面でのチャレンジは、戦地での「伝令」という任務を果たそうとする、主人公の過酷を極める道のり、その背景を、すべてセットで作ったこと。オープニングのシーンを中心に何度か出てくる塹壕は、総距離、1マイル(1.6km)におよんだ。壁面が15度の傾斜である塹壕は、単に地面を掘っただけでなく、崩れるのを防ぐために支柱を入れ、その上に、しっくいや鉄板、土嚢など多くの素材が盛られている。さらに「使われた」状態にするために経年加工もほどこされた。




 映画の中盤、巨大な炎が描かれるシーンがあるが、このために5階建ての照明用の櫓が建てられ、2000個ものタングステンの光源が設置された。これは映画史上でも最大級の照明セットである。ここにポストプロダクションで視覚効果が足され、地獄のような炎が完成されたのだ。


 今作で2度目のアカデミー賞撮影賞に輝いたロジャー・ディーキンスは、助手にカメラを持たせ、少し離れた位置で小型バンに乗った状態から遠隔操作を行ったりもしている。カメラをワイヤーなどに取り付けてスムーズに動かした後、カメラを回したままでワイヤーから外し、オペレーターが手持ちでジープに乗り、さらにジープから降りてカメラを持ったまま走る……といった、不可能ともいえる撮影も遂行された。




 ディーキンスが懇意にするカメラのアリ社が、「アレクサ・ミニLF」という小型のカメラを開発。今作で初めて使われ、この自由自在な手法が可能になった。戦争映画をワンカットらしき映像で完成させる、前代未聞のチャレンジを成功に導いたのだ。



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