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『1917 命をかけた伝令』計算しつくされたワンカットの「流れ」で、舞台劇のように感情移入させるアプローチ

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『1917 命をかけた伝令』計算しつくされたワンカットの「流れ」で、舞台劇のように感情移入させるアプローチ

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監督の欲望をかき立てる、長回しやワンカットへの挑戦



 そして言うまでもなく、最新テクノロジーという点では、基本的に長回しで撮った各カットを高度なデジタル処理でつなぎ、戦闘機の落下など激しいアクション場面にCGが多用されている。アナログのセットとの信じがたい親和性が、今作にアカデミー賞特殊効果賞をもたらした。


 このワンカット映像は、サム・メンデス監督は前作『007 スペクター』(15)でも試みていた。オープニングのメキシコシティでの死者の日のパレード。そこからジェームズ・ボンドが女性とベッドを共にしそうになり、敵との攻防になだれ込むまでの約5分半を、ワンカットで見せ切った。この時すでに、メンデス監督は、ワンカットへの強い欲求があったことを告白している。もともと舞台演出家としてキャリアを積んでいたこともあって、目の前で流れていく時間を、そのまま観客に体験してほしいのであろう。



 メンデスに限らず、ワンカット、長回しへの欲求は、多くの映画監督がもっている。代表的な例がブライアン・デ・パルマで、多くの作品で長回しを使用。中でも『虚栄のかがり火』(90)のブルース・ウィリスがリムジンを降りてパーティ会場へ向かうオープニングは、5分にもわたってカットが切れない。


 そのデ・パルマに多くのインスピレーションを与えたアルフレッド・ヒッチコックもまた、『ロープ』(48)で長回しと、映画史上初といわれるワンカットに挑んでいる。現在と違って、フィルムで撮影していた時代で、しかも1948年当時のフィルムは最長で10分ほど。巧妙にフィルムの交換が行われているし、明らかなカット割りもあるのだが、とりあえず「全編ワンカット」という形式で語り継がれた作品である。


 長い時を経てフィルムからデジタルに移行したことで、長編でも全編をワンカットで撮影した作品が現れた。2002年の『エルミタージュ幻想』である。ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督は、世界遺産のエルミタージュ美術館の内部を、90分、一度もカットを入れずにカメラを回し続けた。



 その後、ゼバスチャン・シッパー監督による、2015年の『ヴィクトリア』では、偶然の出会いから始まる悪夢的な事件を、会話はほぼ即興、ハプニングが起こってもそのままカメラを回し続ける手法で、全編138分のワンカットで映画を完成させた。


 また、全編ではないが、『ウトヤ島、7月22日』(18)では、ノルウェーの銃乱射事件の「現場」部分の72分間をワンカットで撮影している。『エルミタージュ幻想』と同じく、綿密なリハーサルを行って、本番の撮影は5日間。1日1回の計5回で、その中から最高のものが本編で使われた。



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