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『アウトロー』トム・クルーズによるトム・クルーズのためのアンチ・トム・クルーズ映画

(c)Photofest / Getty Images

『アウトロー』トム・クルーズによるトム・クルーズのためのアンチ・トム・クルーズ映画

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一世一代のチャンスを得たクリストファー・マッカリー



 監督に起用されたのは、クリストファー・マッカリー。『ユージュアル・サスペクツ』(95)でアカデミー脚本賞を受賞し、『誘拐犯』(00)で監督デビューを果たした才人だ。だがその後はヒット作に恵まれず、ノンクレジットで脚本をリライトする仕事を請け負うなど、不遇をかこっていた。ダーレン・アロノフスキーが監督を務める予定だった『ウルヴァリン: SAMURAI』(13)のシナリオを手掛けたものの、アロノフスキー降板後に大幅に書き直され、彼の名前がクレジットから削除されてしまう、という憂き目にもあっている。


 一時は映画界からの引退も考えていたが、脚本を執筆した『ワルキューレ』(08)で、トム・クルーズからの信頼をゲット。『アウトロー』で12年ぶりにメガホンをとるという、一世一代のチャンスを得る。ビッグ・バジェットのハリウッド映画としては、異例の大抜擢といえるだろう。しかしクリストファー・マッカリーが『アウトロー』で目指したのは、ハリウッドのメインストリームとは大きく異なるものだった。



『アウトロー』(C) 2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 「僕は、いつも自分をアウトロー(部外者)だと思っていた。パーティーでもオタクのような存在に感じていたんだ」とは、クリストファー・マッカリー自身のコメント。さらに「僕はアンチ・ハリウッド精神の持ち主だ」と公言するほどのマニア気質で、決して全方位的な娯楽映画を撮るタイプではない。好きな監督に挙げているメンツも、アラン・J・パクラ、シドニー・ルメット、ピーター・ボグダノヴィッチと、渋い社会派フィルムメーカーばかり。


 アラン・J・パクラは『大統領の陰謀』(76)、シドニー・ルメットは『セルピコ』(73)、ピーター・ボクタノヴィッチは『殺人者はライフルを持っている!』(68)という代表作があることでも明らかなように、’60年代後半〜'70年代のクライム・アクション映画に大きく影響を受けていることは明らかだ。そのエッセンスは、『アウトロー』にも縦横無尽に張り巡らされている。



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