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『シンクロナイズドモンスター』でたどる怪獣映画の真意とは? 「怪獣」って何か説明できる!?
2017.11.09
そして、現れた新しい怪獣とは?
『シンクロナイズドモンスター』は上記の怪獣映画たちとは明らかに一線を画している、新しい怪獣映画だ。『シンクロナイズドモンスター』では、怪獣がもはや「メタファー」であることをやめているのである。何しろ、主人公が怪獣なのだ。象徴であることをすっ飛ばして、何の工夫も無く、怪獣が主人公の分身になっている。誰もが一度は考えていそうな設定だが、ここまで率直な作品は、実はこれまでにほとんど無かったのではないだろうか。
何故今、こうしたストレートな怪獣が登場したのだろうか。その理由は、直球で表現してやらないと今の観客はその怪獣が何のメタファーなのか考えようとしないからだろう。見回してみれば、怪獣がただ暴れるだけの映画が世の中に生まれている(筆者は『パシフィック・リム』は好きだが、その点だけはいただけないと思っている)。CGの発達によって、画に説得力のある怪獣映画が量産される現代、人々は怪獣映画に慣れ過ぎてしまっているのではないだろうか。怪獣が何のために現れるのか、怪獣が何を代弁しているのか、誰も、考えなくなってしまった。怪獣が人間の罪の象徴だと、誰も思わなくなったのだ。そして、ただ怪獣プロレスを楽しむ時代になってしまった。。
『シンクロナイズドモンスター』(c)2016 COLOSSAL MOVIE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
そうした新世代の為に、大いに皮肉を込めて『シンクロナイズドモンスター』は作られたのだろう。怪獣は「外敵」ではなく、いつだって自らの中に居ることを、忘れてはならない。「怪獣はお前たちの方だ」と怪獣が指さしてくる映画、それが『シンクロナイズドモンスター』なのだ。
文:東山タカマサ
『シンクロナイズドモンスター』
配給:アルバトロス・フィルム
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※2017年11月記事掲載時の情報です。