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嬉々として製作を進めるオタク監督
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)のマイケル・ドハティ監督や、その前作『GODZILLA ゴジラ』(14)のギャレス・エドワーズ監督のように、日本の「怪獣」に魅せられて自作にその愛を爆発させたクリエイターがいるが、その元祖といえば、やはりギレルモ・デル・トロだろう。『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)でアカデミー賞監督賞に輝き、今や「世界の巨匠」となったギレルモだが、その根本が究極のオタクであることは誰もが知るところだ。
ギレルモの怪獣愛が炸裂したのは、もちろん『パシフィック・リム』(13)。太平洋(パシフィック)の深海から姿を現した巨大生命体に対し、環太平洋(パシフィック・リム)の国々が、人類が開発した「イェーガー」という巨大ロボット型兵器を使って立ち向かう物語。公開当時、日本人を驚かせたのは、相手となる生命体が「KAIJU」という総称で呼ばれていた点だ。モンスターではなく、あくまでもKAIJU=怪獣。ギレルモ・デル・トロの怪獣愛が伝わってきた。
『パシフィック・リム』が公開されたのは2013年の夏だが、同年4月、ロサンゼルスのワーナー・ブラザースのスタジオの一角で、ギレルモ・デル・トロはプロダクション・オフィスを構え、最終仕上げを行なっていた。
ギレルモのオフィス内の壁にはぎっしりとコンセプト・アートが貼られていた。イェーガーもKAIJUも、当然のごとくCGで映像化されるのだが、そのデザインへのこだわりは格別のようで、公開までの急ピッチな作業が進む時期にかかわらず、ギレルモの説明には異様なほどの喜びと興奮が込められていた。
まずはイェーガーのメインキャラである、ジプシー・デンジャー。ブレストファイアーや、ロケットパンチを思わせる攻撃も繰り出す機能は、あのマジンガーZのパクリとも思えるほどだが、ギレルモの説明はこうだ。
「ジプシー・デンジャーの初期デザインでは、ジョン・ウェインが演じる西部劇のガンマンをイメージした。アメリカのロボットということで、エンパイア・ステート・ビルやクライスラービルなどNYの摩天楼の建築デザインも利用している」