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『シェイプ・オブ・ウォーター』で3度流れる名曲。ギレルモ・デル・トロの込めた思いとは?※注!ネタバレ含みます。

(C)2017 Twentieth Century Fox

『シェイプ・オブ・ウォーター』で3度流れる名曲。ギレルモ・デル・トロの込めた思いとは?※注!ネタバレ含みます。

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『シェイプ・オブ・ウォーター』あらすじ

1962年、アメリカ。政府の極秘研究所に勤めるイライザは、秘かに運び込まれた不思議な生きものを見てしまう。アマゾンの奥地で神のように崇められていたという“彼”の奇妙だが、どこか魅惑的な姿に心を奪われたイライザは、周囲の目を盗んで会いに行くようになる。子供の頃のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は必要なかった。音楽とダンスに手話、そして熱い眼差しで二人の心が通い始めた時、イライザは“彼”が間もなく国家の威信をかけた実験の犠牲になると知る─。


Index


言葉に出せないヒロインの思いを曲が代弁



 『シェイプ・オブ・ウォーター』には、ある曲が3回流れる。「You’ll Never Know」という曲だ。


 最初はヒロイン、イライザの隣人で、彼女の良き理解者であるジャイルズが聴いている。2回目は、イライザが空想の中で歌う。そして3回目はエンドクレジットに流れる。これだけ強調して使われるということには重要な意味があるのだろう。


 歌詞の冒頭は、このような内容だ。


 私がどれだけあなたを恋しいか、あなたは知ることはないだろう

 私がどれだけあなたを気づかっているか、あなたは知ることはないだろう

 試してみたけど、あなたへの愛は隠せない

 百万回もこの気持ちが言えなかったことを、あなたに知ってほしい……


 思いを口に出せないもどかしさ。この「You’ll Never Know」を使用した理由について、ギレルモ・デル・トロ監督は次のように説明した


 「口のきけないイライザがどれだけ相手に愛を伝えたくても、その言葉を音で表現することはできない。僕の生まれたメキシコでは、愛を伝えるとき、歌で表現する。バルコニーの下からセレナーデを歌うんだ。だからイライザにも歌い上げてほしくて、空想のシーンでそれを可能にした。この曲は歌詞が物語にぴったりなので、僕も聴いただけで泣けてしまう。言葉で表現する思いには嘘もあるけど、歌で表現することは真実だと、僕は信じているのさ」



『シェイプ・オブ・ウォーター』(C)2017 Twentieth Century Fox


 この「You’ll Never Know」は、1943年の日本では未公開のミュージカル映画『Hello, Frisco, Hell』でアカデミー賞歌曲賞を受賞した名曲である。劇中で歌っていたのは、アリス・フェイ。ジャイルズが愛聴するのも アリス・フェイのバージョンだ。アリス・フェイは、ブロードウェイから映画界に進出し、1940年代に数々のミュージカル映画に出演してスターとなった。


 とはいえ、ミュージカル映画ファンにとっても「知る人ぞ知る」存在ではある。『シェイプ・オブ・ウォーター』は1962年の物語なので、ジャイルズがアリス・フェイのファンであることは、そんなに珍しいことではない。劇中では彼の部屋で、やはり1940年代のミュージカルスター、 カルメン・ミランダ(頭にフルーツなどを載せたド派手な衣装で有名)の映像が流れるシーンもあり、彼がミュージカルオタクであることがよくわかる。



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