2018.03.06
ヘルボーイはバリー・マニロウで演出
このように映画監督は使用する曲に大きなこだわりをもつものだが、ギレルモ・デル・トロの過去の作品で、インパクトに残る曲は、『 ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』でのバリー・マニロウの「 涙色の微笑」ではないか。“悪魔”キャラのヘルボーイを中心に、奇怪なクリーチャーが大挙出てくるコミックの映画化で、作品のテイストにバリー・マニロウのこの曲は一見、まったく合っていない。
しかしデル・トロが若い頃、誰かに恋したとき聴いていたのが「涙色の微笑」で、タフガイのヘルボーイがこの曲を好きだという「ギャップ」を表現するのに最適だと判断したのだ。ヒーローの素顔を描きたいと考えた彼は、ヘルボーイが、半魚人のエイブ・サピエンとビールを飲みながら女性や人生について語るシーンをどうしても入れたくて、今作を製作する際、最初にイメージを巡らせたという。この曲には当初、周囲から大反対もあったそうだが、デル・トロが押し切って使用。その結果、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』の中でも、最も印象に残るシーンとなった。
『 ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』予告
ギレルモ・デル・トロといえば、奇妙なクリーチャーが出てくるファンタジーの監督という印象も強いが、こうした使用曲のチョイスを振り返ると、彼自身はひじょうにロマンチストだというのがよくわかる。だからこそ、奇抜な恋の運命を描いた『シェイプ・オブ・ウォーター』も、観る者をロマンチックな気分にさせるのだろう。
文: 斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。スターチャンネルの番組「GO!シアター」では最新公開作品を紹介。
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