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『リメンバー・ミー』壁などない!ディズニー/ピクサーだからこそ成し得た「越境」とは

『リメンバー・ミー』壁などない!ディズニー/ピクサーだからこそ成し得た「越境」とは

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高い評価を得たメキシコという地域性



 去る3月の第90回アカデミー賞において、長編アニメーション賞と、主題歌賞を受賞したディズニー/ピクサーの『リメンバー・ミー』。国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)が主催するアニー賞でもリー・アンクリッチ監督とエイドリアン・モリーナ共同監督が映画部門監督賞を受賞、ほかにも作品賞、映画部門脚本賞、声優賞・編集賞・キャラクター・デザイン賞ほか11部門での受賞を果たし、2017年度を代表するアニメーションとしての地位を固めた。


 これほどまでに高い評価を得た理由はずばりメキシコという地域性にある。この作品が描くのは、日本のお盆と共通する「死者の日(Día de Muertos)」。毎年11月1日には子供の魂を、2日には大人の魂を迎える日として、メキシコの人々は華々しく死者の魂を祝祭するのだが、その独特の文化を多彩なデザインで見せることに成功している。子どもにとっては優れた死生観の入門映画となっていて、大人にとっても「死をもって生を感じるメメント・モリ」の映画として、深く心の琴線に触れる映画となっている。 




 ディズニーはこれまでも、『 ポカホンタス』(1995)では実在したネイティブアメリカンの女性の人生を題材にし、他にも『 ムーラン』(1998)では中国の伝説「花木蘭」をモチーフにした女性戦士の物語を、『 アナと雪の女王』(2013)では北欧神話、『 モアナと伝説の海』(2016)ではポリネシア神話をピックアップし、地域性に密着したヒロインの成長物語を積極的に描いてきた。だが、それは、特別な才能を持った女の子だから特別な体験を実現させられる、選ばれし者の成功体験という物語上の制約も抱えており、そこにうまくコミットできない観客にとっては疎外感を抱くというウィークポイントも付きまとっていた。


 だが、今回の『リメンバー・ミー』は2003年にユネスコの無形文化遺産に認定された「死者に捧げる先住民の祭礼行事」そのものにフォーカスをする。一人の少年が会ったこともない高祖父(ひいひいおじいさん)への思慕を募らせ、死者の国に迷い込んだことで、先祖の歴史を辿ると同時に、ディープなメキシカンカルチャーとも遭遇する。これがメキシコを知らない人にとっては強烈な異文化体験となる構造だ。


 奇しくも、この映画がアメリカ公開された2017年という年は、1月、アメリカ大統領であるドナルド・トランプが立候補の段階から選挙公約として掲げていたメキシコとの国境沿いに「通過不可能な具体的な障壁」を建設するよう大統領令で命令し、未登録移民の保護区となっている米国内の都市への連邦交付金を撤回する命令に署名した年。政治ではアメリカとメキシコを分断する壁についての議論が絶えなかった一年だったが、これに対して『リメンバー・ミー』のメッセージは、相互理解と愛と記憶さえあれば、死者と生者を分かつ壁さえも乗り越えられると徹頭徹尾謳いあげる。壁などない、それがこの映画の明快な意志だ。



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