※2018年2月記事掲載時の情報です。
『スリー・ビルボード』あらすじ
アメリカはミズーリ州の田舎町エビング。さびれた道路に立ち並ぶ、忘れ去られた3枚の広告看板に、ある日突然メッセージが現れる。──それは、7カ月前に娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)が、一向に進展しない捜査に腹を立て、エビング広告社のレッド・ウェルビー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)と1年間の契約を交わして出した広告だった。自宅で妻と二人の幼い娘と、夕食を囲んでいたウィロビー(ウディ・ハレルソン)は、看板を見つけたディクソン巡査(サム・ロックウェル)から報せを受ける。
一方、ミルドレッドは追い打ちをかけるように、TVのニュース番組の取材に犯罪を放置している責任は署長にあると答える。努力はしていると自負するウィロビーは一人でミルドレッドを訪ね、捜査状況を丁寧に説明するが、ミルドレッドはにべもなくはねつける。町の人々の多くは、人情味あふれるウィロビーを敬愛していた。広告に憤慨した彼らはミルドレッドを翻意させようとするが、かえって彼女から手ひどい逆襲を受けるのだった。
今や町中がミルドレッドを敵視するなか、彼女は一人息子のロビー(ルーカス・ヘッジズ)からも激しい反発を受ける。一瞬でも姉の死を忘れたいのに、学校からの帰り道に並ぶ看板で、毎日その事実を突き付けられるのだ。さらに、離婚した元夫のチャーリー(ジョン・ホークス)も、「連中は捜査よりお前をつぶそうと必死だ」と忠告にやって来る。争いの果てに別れたチャーリーから、事件の1週間前に娘が父親と暮らしたいと泣きついて来たと聞いて動揺するミルドレッド。彼女は反抗期真っ盛りの娘に、最後にぶつけた言葉を深く後悔していた。
警察を追い詰めて捜査を進展させるはずが、孤立無援となっていくミルドレッド。ところが、ミルドレッドはもちろん、この広告騒ぎに関わったすべての人々の人生さえも変えてしまう衝撃の事件が起きてしまう──。
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過去10年で作品賞ノミネートが10本
この会社が製作した作品の仕上がりは、つねに映画ファンの多くが注目してしまう。その会社の名は、フォックス・サーチライト・ピクチャーズである。20世紀フォックス映画の子会社で、大ヒットを狙う作品ではなく、監督の作家性を重視し、インディペンデント系の作り、アーティスティックな側面が強い野心的作品を精力的に製作している。1994年に設立されて以来、90年代に『フル・モンティ』なども送り出したサーチライトだが、一躍、話題作となったのが、1999年の『ボーイズ・ドント・クライ』だ。性同一性障害(この「障害」というのは当時の通称。現在は使われない傾向にあり「性別違和」「性別不一致」などと称される)の主人公を演じたヒラリー・スワンクがアカデミー賞主演女優賞に輝き、「サーチライト作品」がブランド的に注目を高めたのだ。
『スリー・ビルボード』(C)2017 Twentieth Century Fox
その後もコンスタントにアカデミー賞候補となる作品が続き、2004年の『サイドウェイ』が脚色賞、2006年の『リトル・ミス・サンシャイン』が脚本賞と助演男優賞、2007年の『JUNO/ジュノ』が脚本賞を受賞。2008年には『スラムドッグ$ミリオネア』が作品賞をはじめ8部門で受賞という快挙をなしとげた。それ以降も『クレイジー・ハート』、『ブラック・スワン』、『ファミリー・ツリー』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などアカデミー賞での受賞が途切れずに続いている。過去10年のアカデミー賞で、サーチライトが製作または配給した作品の、作品賞ノミネートはじつに10作品を数える。高確率で傑作保証の製作会社なのである。