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『リメンバー・ミー』壁などない!ディズニー/ピクサーだからこそ成し得た「越境」とは
可愛いガイコツと美醜に囚われないディズニーキャラクターが画期的
さて、死者の日に欠かせないアイテム、それは骸骨である。骸骨は忌み嫌う対象ではなく、むしろ砂糖菓子にして祭壇に飾り、愛すべきポップなものである。
アレハンドロ・ホドロフスキーの『 エンドレス・ポエトリー』では、チリからメキシコへと旅立つラスト、芸術家として開花する自分の運命を予兆し、自画自賛するかのように、壮大な数のエキストラに因る骸骨踊りを披露している。『リメンバー・ミー』でも死者の国の壮大な数のキャラクターはみな骸骨で、さらに迫力がある。
『 エンドレス・ポエトリー』予告
これは画期的なことで、ディズニーのプリンセスシリーズでは、どうやったって可憐で綺麗なお姫様が主人公であり、だからこそ、王子様と出会ったり、運命の恋と巡り合えたり、邪悪な魔女に打ち勝ったりと、美が醜を打ち破るというセオリーに則るしかなかったのが、今回は主要なキャラクターがほぼ骸骨であるがために、そういう美醜の基準や判断から解き放たれていて、フリーダムな精神性を感じさせられる。あのフリーダ・カーロですら骸骨として登場するのだが、ちゃんとフリーダだとわかるような装飾をされていて、それが個性として際立つように人物造形がなされている。こういうことを子供向けのアニメーションでさらっとやってのける、ディズニー並びにピクサーの底力に唸らされてしまう。
人を見た目で判断しない。外見ではわからないその人の個性を認め、どの人が信頼でき、できないのか。しいては、人をよく見る。そういうメッセージ性は、2018年のアカデミー賞で作品賞を受賞したメキシコ出身の映画監督、ギレルモ・デルトロの『 シェイプ・オブ・ウォーター』にも共通する。
『 シェイプ・オブ・ウォーター』予告
ちなみにメキシコにおいて『リメンバー・ミー』は2017年の死者の日のシーズンに合わせて公開され、メキシコ映画史上歴代最高の興行収入を記録した。ローカル性を強めた題材のとき、その国の観客から「エキゾティックすぎる」「民族性を正確に描いていない、アメリカナイズされている」という批判が少なからず出ることもあった過去の作品と比べても、これは画期的なこと。『トイ・ストーリー3』でメインターゲットである子どもよりも、付き添いの大人や親たちをとにかく泣かせたと評判になったリー・アンクリッチ監督らしい。
伝説のクリエイター、アレハンドロ・ホドロフスキーとは何者!?『エンドレス・ポエトリー』
『シェイプ・オブ・ウォーター』で3度流れる名曲。ギレルモ・デル・トロの込めた思いとは?※注!ネタバレ含みます。
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」「装苑」「ケトル」「母の友」など多くの媒体で執筆中。著書に映画における少女性と暴力性について考察した『ブロークン・ガール』(フィルムアート社)がある。『90年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)、『アジア映画の森 新世紀の映画地図』(作品社)などにも寄稿。ロングインタビュー・構成を担当した『アクターズ・ファイル 妻夫木聡』、『アクターズ・ファイル永瀬正敏』(共にキネマ旬報社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワネットワーク)などがある。
『リメンバー・ミー』
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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