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『リメンバー・ミー』壁などない!ディズニー/ピクサーだからこそ成し得た「越境」とは
徹底的にビジュアル化される越境のイメージ
『リメンバー・ミー』の始まりは、パぺルピカド(papelpicado)と呼ばれる切り絵飾りを使って、主人公ミゲルの高祖父と高祖母の出会いと別れが説明される。パペルピカドは死者の日に、亡くなった親族の魂を迎える祭壇、アルタールを彩るのに欠かせないものであり、最近、日本では旗のように天井からぶら下げたり、壁に貼ったりと、乙女心をくすぐるインテリアグッズとしても人気だ。精巧な切り絵模様によって、音楽家を目指して家を出ていった高祖父のエピソードが語られ、そのため、ミゲルの家では音楽を奏でることが固く禁止されているという前説がなされる。
しかし、ミゲルにはどうしてもギターリストになりたいという夢がある。なぜ、高祖父は家を出ていったのか。音楽を優先させた生活はどういうものだったのか。その問いかけは、死者の国に迷い込んだ彼の冒険と共に明かされていく。特筆すべきは、死者の日の祭典の美しさで、その匂いで魂を呼び寄せるというマリーゴールドの鮮やかな黄金色が映画の中で強烈な差し色となっている。
『リメンバー・ミー』(C)2018 Disney/Pixar. All Rights Reserved.(C)2018 Disney. All Rights Reserved.
また、現世と死者の国を繋ぐ橋もマリーゴールドの大量の花弁で出来ているのだが、この花の動きが、カナダからメキシコまで4,000キロを旅する“渡り蝶”で知られるオレンジ色のオオカバマダラの飛翔を思わせる。オオカバマダラはカナダのトロント郊外から巣立って、メキシコの中央高原へと目指すのだが、ゴールとなる村に到着するのはまさに死者の日前後のシーズンという。そのため、オオカバマダラはメキシコでは死者の精霊とも言われているのだが、この意味でも、「越境」のイメージが見事にビジュアル化されていると言えるだろう。