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『20センチュリー・ウーマン』1979年を軸に音楽でたどる、映像作家マイク・ミルズのルーツ

『20センチュリー・ウーマン』1979年を軸に音楽でたどる、映像作家マイク・ミルズのルーツ

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半自伝的映画における1979年という重要な「転換期」の時代



 『20センチュリー・ウーマン』ほど、音楽・選曲に大切な「意味」が託されている映画も稀ではなかろうか。しかも決して頭でっかち(オタク的)な使い方ではなく、リアルな実感のこもったもの。それもそのはず、この映画は監督・脚本を務めたマイク・ミルズの半自伝的な内容なのだ。もし音楽・選曲の「意味」をスルーして本作を観てしまったら、理解度も面白さも、感動も半減してしまうだろう。


 物語の舞台は1979年の夏、米カリフォルニア州サンタバーバラ。L.A.から少し離れた西海岸の郊外に住む15歳のスケボー少年、ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)は多感な思春期の真っ盛り。彼は55歳のシングルマザー、母親ドロシア(アネット・ベニング)と二人暮らしだ。息子を高齢出産で産んだ彼女は、ルイ・アームストロングやベニー・グッドマンなどのジャズが好きで、煙草をプカプカ吸い、新聞の株価情報を毎朝チェックしてから、仕事場である大手製缶メーカーの製図室に出勤する元祖・自立した女性。憧れは女性パイロットと映画『カサブランカ』(1942年)などのハンフリー・ボガードだが、自分にはよくわからない新しい文化のことも知ろうと努力する――。そんなドロシアは、言わば「旧世代のモダンガール」だ。このユニークな親子は、古くて大きな自宅の余っている部屋に間借り人を招いて、奇妙な共同生活を営むことになる。




 もちろん、この少年ジェイミーこそ、若き日のマイク・ミルズがモデルだ。もっともミルズは1966年生まれなので、当時は13歳。別にシングルマザー家庭だったわけでもなく、不在がちながら父親もいた(それがミルズの監督第二作『人生はビキナーズ』(2010年)で描かれた、75歳にしてゲイであることをカミングアウトした老父のモデルだ)。このへんはあくまでもフィクションの設定として、実際とはニアリーイコールの関係にとどめているようだ。


 重要なのは1979年という時代設定である。ミルズは2012年に『1979』というこの年のトピックとなった写真を多数コラージュした5分の映像作品を作っており( マイク・ミルズの公式サイトで視聴可能)、そこには「僕はその年にザ・クラッシュの『ロンドン・コーリング』とザ・ダムドの『マシンガン・エチケット』のレコードを買った。僕にとっては、大人の人生を形作ることの始まりだった」「それは古い世界のアイデアとイメージから、今日の世界への重要な移行が起こった年だ」とのコメントが添えられている。つまり世の中、とりわけミルズの人生における決定的な転換期。さらに彼は『20センチュリー・ウーマン』の本国公式サイトで『1979 Radio』というページを設けたりと、このエポックとなった忘れ難い一年へのこだわりはハンパないのである。


 ちなみに筆者がすぐに連想したのは、スマッシング・パンプキンズの名曲「1979」(1995年のアルバム『メロンコリーそして終りのない悲しみ』収録)だ。フロントマンのビリー・コーガンは1967年生まれで、キッズ時代の追憶が時代のムードと絡めて歌われる。やはり1979年は、彼らの世代(のある種のタイプ)の人格形成にとって、特に影響の強い象徴的な年として記憶されているのだろう。




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