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『ミステリー・トレイン』音/音楽が繋ぎ合わせる3つの「人生=旅」 ※注!ネタバレ含みます。

(C)Mystery Train, INC. 1989

『ミステリー・トレイン』音/音楽が繋ぎ合わせる3つの「人生=旅」 ※注!ネタバレ含みます。

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思いがけぬ“出会い”──「ア・ゴースト」



 「ファー・フロム・ヨコハマ」の男女が安ホテルで朝を迎え、一発の銃声を耳にすると、物語は第2章「ア・ゴースト」へ。こちらに登場するのは、ローマからやってきた女・ルイーザ(ニコレッタ・ブラスキ)だ。空港にいたはずの彼女は何やらトラブルに見舞われ、ここメンフィスで足止めを食うことになる。


 彼女もまた先の二人と同様に、この町から浮いている。シンプルで小綺麗な身なりからしてもそうだ。しかし、それはしょうがないこと。彼女の場合は、図らずもこの町で一晩を過ごさなければならなくなったのだ。買い物に行けばカモにされ、不要なものまで買わされる始末。そんな彼女が地元の連中の目に止まれば、さらにカモにされるに違いない……と心配していた矢先、やはり胡散臭い男が声をかけてくる。彼女が金を渡して追い払っても、まだ目をギラつかせている男たち。一刻も早く安心できる場に落ち着かなくては。


『ミステリー・トレイン』(C)Mystery Train, INC. 1989


 そうして彼女が訪れたのが、「ファー・フロム・ヨコハマ」の男女が泊まった安ホテル。『ミステリー・トレイン』というタイトルながらも、登場人物たちが共有するのは「列車」ではなく「ホテル」なのだとここで分かる。一人では何かと心細い彼女は、そのホテルの入口で偶然にも鉢合わせた一人の若い女・ディディ(エリザベス・ブラッコ)と部屋を同じにすることに。思いがけぬ出会い──旅の醍醐味だ。


 本作において「ホテル」が共通項だというのは分かったが、この後、あらすじを知らずに本作に触れた観客には思わぬサプライズが与えられる。「ファー・フロム・ヨコハマ」の男女はラジオから流れてくる「ブルー・ムーン」のプレスリーの歌声とともに夜に溶けていくのだが、「ア・ゴースト」のルイーザも、夜にこの歌声を耳にするのだ(しかも、プレスリーの幽霊を一瞬だけ目にする!)。どうやら、同じ夜、同じホテルに、この“男女たち”は泊まっているらしい。やがてこれは確信に変わる。そう、ルイーザとディディもまた、一発の銃声を耳にするのだ。



 

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