名優ジャック・ニコルソンを困惑させた難役、メルヴィン
自己中心的で、いつでも喧嘩腰で、誰に対しても悪態をつきまくるメルヴィン(ジャック・ニコルソン)は、極度の偏屈男として登場する。いや、むしろそれは「性格が悪い」というレベルを超えており、彼が常に感じている不安と恐怖は、反復的な行動につながる。だから、電灯を消したかを5回ずつ確かめたり、スプーンやフォークの位置を厳格に決めたりするのだ。もはや『シャイニング』(80)とほとんど変わらず、まるでホラーのようだ。
ジャック・ニコルソンは、自分のキャラクターがあまりにもエクストリームな人格破壊者であるため、「誰もこの映画を好きになってくれないのではないか?」と恐れていたという。そりゃそうだろう。隣人が飼っている可愛らしい子犬を、ダストシュートに投げ捨てる主人公に誰が共感できるだろうか?ニコルソンは本作を、「誰かを怒らせるだけのラブストーリー(A love story where you do nothing but aggravate somebody)」と表現していたくらいだ。
『恋愛小説家』(c)Photofest / Getty Images
ハリウッドを代表する名優の彼をもってしても、メルヴィンは相当な難役だった。監督のジェームズ・L・ブルックスは、インタビューでこう証言している。
「私は彼の何の役にも立ちませんでした。私がしたことといえば、『それは違うんじゃないかな』と発言して、彼をイライラさせたことです。そして、彼は明らかに泥沼にハマってしまっていました」(引用:VARIETY インタビュー)
そんなジャック・ニコルソンだが、後年「今まで演じた中で最も愛すべきキャラクターだった」とも語っている。