『恋愛小説家』あらすじ
メルヴィンは人気恋愛小説家として成功していたが、実生活での彼は自己中心的で、いつでも喧嘩腰で、誰に対しても悪態をつきまくる偏屈家の嫌われ者だった。強迫神経症を抱えていて、毎日同じ店の決まった席で、お気に入りのウェイトレスのキャロルが対応してくれないと食事もできない。ある日、泥棒に入られた隣人のゲイの芸術家が怪我をして、彼の愛犬バーデルをメルヴィンが預かることに。最初は嫌々だったメルヴィンだが、徐々にバーデルへの愛情を感じ始める。メルヴィンに起きた変化は思いを寄せるキャロルに対しての態度も軟化させ、2人の仲は徐々に縮まっていく。キャロルに愛の告白をしようとするメルヴィンだったが、お得意の毒舌で彼女を傷つけてしまうのだった。
Index
生活感がべったりと貼り付いたヒロイン、キャロル
筆者はこれまで、古今東西あまたの映画を鑑賞し、あまたの女優に恋焦がれ、胸をときめかせてきた。思い返してみるだけでも、ジーン・セバーグ、シャーリー・マクレーン、ジュリー・デルピー、メグ・ライアン、ウィノナ・ライダー、ナタリー・ポートマン、ペ・ドゥナ、(以下略)。そして間違いなく『恋愛小説家』(97)のヘレン・ハントも、筆者のハートを完璧に撃ち抜いたスーパー・ウルトラ・ステキ女子である。ジャック・ニコルソンが劇中で、「この世で僕だけが、君がこの世で最高の女だと知っている」とのたまうシーンがあるが、彼女のチャーミングさに接したなら、誰しもゾッコンになることだろう。
『恋愛小説家』でヘレン・ハントが演じるキャロルは、ニューヨークのダイナーで働くバツイチのウェイトレス。母親と子供の3人暮らしで、喘息持ちの息子のことをいつも気にかけている。時々殿方といい感じのラヴ・アフェアーに及ぶこともあるけれど、触れられても思わず笑っちゃうし、何だかんだで子供が気になって集中できないし、全然ロマンティックなムードにならない。挙げ句の果てには「悪いけど現実的すぎる」と捨て台詞を吐かれて、相手に逃げられてしまう始末だ。
『恋愛小説家』予告
ジェニファー・ロペス的なゴージャス感も、ニコール・キッドマン的なクール・ビューティ感もナッシング。彼女には生活感がべったりと貼り付いているのだ。そしてそのことが、キャロルという役柄をこの上なくチャーミングなものにしている。
例えば、土砂降りの中ジャック・ニコルソン演じるメルヴィンのアパートを訪ねるシーン。ずぶ濡れのTシャツ姿で透けてしまった…という、ヘタしたら下品になりかねないこのシーンを、ヘレン・ハントという女優から滲み出る圧倒的庶民感によって、ラブコメとしてしっかり着地させているのだ。