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オスカーノミネートを果たした夫婦脚本家の執筆術『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』

オスカーノミネートを果たした夫婦脚本家の執筆術『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』


あえてタブーに切り込むことを恐れない



 クメイルは本作で、家族のユーモラスな側面を盛り込みたいと感じていたという。なぜなら、これまで映画やドラマで描かれてきたムスリムのキャラクターは過度に深刻なものばかりだったから。そのステレオタイプを覆し、日常生活で沸き起こる笑いの部分を提示したかったのだ。しかしそんな彼でも、最後まで躊躇していたのが暮らしの核となる「宗教」を描くということだった。一つ間違えば激しいバッシングを受けたり、あるいは家族や同胞の心を傷つけることにもなりかねない。クメイルはできれば危ない橋は渡りたくなかった。しかしアパトーは、脚本の添削を重ねるごとに執念深く「宗教のことは?」と尋ねてきたのだそうだ。おそらく彼は、このテーマをいかに乗り越えるかが本作の成否を分けるポイントだと確信していたのだろう。それゆえ逃げることを許さなかった。クメイルが「そのことには取り組みたくない」と答えた時の“返し”が実に興味深い。


「取り組まなくてもいい。どう感じるかを書けばいいんだ。主張なしで宗教のことを考えることもできるはずだ」(プレス資料より)


 このアドバイスがどれほどクメイルに影響を与えたかは本作を観れば明らかだ。そこには宗教を茶化したり批判するような主張は一切ないが、クメイルならではの方法でこれらをしなやかに見つめ、笑いと敬意を持って描き切るという難易度の高い術が披露されている。タブーと思われるテーマをどう扱い、調理するか。まさにスタンダップ・コメディアンとしての力量が大いに発揮された瞬間と言えるのかもしれない。




 また、ここで逃げなかったからこそ、クメイルは他のテーマからも決して逃げていない。この映画が持つ、家族、文化、愛、病気、そして愛する者が死ぬかもしれないという恐怖についても、表面的な笑いで終わらせることなく、すべて等しく一歩踏み込んだ角度で「どう感じるのか」を率直に描ききっている。それこそが本作が単なるコメディに終始せず、さらなる高みに立てた要因なのだ。



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