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『ビッグ・シック』映画界に風穴を空けたコメディ出身者たちの視点とは?
2018.03.13
『ビッグ・シック』あらすじ
パキスタン生まれシカゴ育ちのコメディアンのクメイルは、アメリカ人大学院生のエミリーと付き合っている。ある日、同郷の花嫁しか認めない厳格な母親に言われるまま、見合いをしていたことがエミリーにバレて、2人は破局を迎える。ところが数日後、エミリーは原因不明の病で昏睡状態に。駆けつけた病院でクメイルが出会ったのは娘を傷つけたことに腹を立てている両親テリーとベスだった。はじめは敵意をあらわにしていた彼らだったが意外な出来事をきっかけに3人は心を通わせ始める。果たしてエミリーは目覚めるのか?その時、2人の未来の行方は?
Index
コメディ出身者たちが巻き起こした新たな旋風
『ビッグ・シック』は第90回アカデミー賞において脚本賞へのノミネートを果たした。かつてシカゴの小さな舞台でスタンダップ・コメディを披露していた主演・脚本のクメイル・ナンジアニが、今や候補者の一人としてドルビーシアターの舞台に堂々と立つ姿に、この映画のエピローグを見ているような誇らしさがこみあげてきた人も多かったはずだ。
惜しくもクメイルは受賞を逃してしまったが、最終的に『 ゲット・アウト』のジョーダン・ピールがオスカーを受賞した事実は、むしろハリウッドにおける新たな潮流を強く印象付ける結果となったように思う。というのも、今回の賞レースで注目を集めたジョーダンとクメイル、二人はどちらもコメディアンとしての原点を持っているからだ。
『ビッグ・シック』(c) 2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
『ゲット・アウト』と『ビッグ・シック』は見た目やジャンル的には大きく異なる作品だが、どちらにも一筋縄ではいかない特殊な視点がある。彼らのキャリアの延長線上にあるような単純なコメディでもなければ、単に方針転換を遂げただけのホラーやスリラー、あるいは人間ドラマというわけでもない。むしろ彼らは“コメディ”で培った視点を忘れず、それを経由したり俯瞰したりすることで物語に新たな光をあて、観客や映画人たちが意識してこなかった未知なる領域を可視化することに成功しているのである。