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『ビッグ・シック』映画界に風穴を空けたコメディ出身者たちの視点とは?

『ビッグ・シック』映画界に風穴を空けたコメディ出身者たちの視点とは?


文化間の衝突や摩擦からコメディやホラーが生じる



 ここで試しに『ゲット・アウト』の特徴を挙げていくと、それらが絶妙な具合に『ビッグ・シック』にも当てはまることに驚かされる。例えば、物語のメインとなるのは肌の色の異なる恋人たち。二人が育った環境や文化は当然ながら大きく違い、やがて彼らには「恋人の両親と会う」という人生の一大イベントが到来する。そこでは多かれ少なかれ価値観や文化の衝突が巻き起こり――――。


 ここで生じたエネルギーを、ジョーダン・ピールは“奇妙な違和感”として作品内に溜め込み、最後の最後で、一つ間違えば大爆笑が起こってしまうほどのショッキングなホラー的展開として炸裂させた。


『ゲット・アウト』米コメディ界の異端児は、いかにしてネタバレNGの最恐ホラーを作り上げたか?


 一方、実話をベースにした『ビッグ・シック』は、異文化の壁を乗り越えようとする男女二人の姿をコミカルなタッチで描いた人間ドラマへと昇華させた。とはいえ、愛する人が突然病に倒れて昏睡状態に陥ってしまう展開は、仮に自分の身に置き換えてみると、もはや受け止めきれないほどの“恐怖”でもある。また病院内の食堂でいきなり「9.11についてどう思う?」などと聞かれたり、ステージの客席から「ISISは出て行け!」などと罵られたりする場面には、日常において笑いと恐怖が紙一重であることを痛感させられる。どちらに針が振れるかは、本当に作り手のさじ加減一つ。もしかすると『ビッグ・シック』が『ゲット・アウト』のようなホラーになったり、また『ゲット・アウト』が思わぬ感動的なドラマと化す、なんて可能性もありえたのかもしれない。




 上記の二作を例にとると、どうやら価値観や文化が衝突するシチュエーションには、濃いドラマ性を生み出す金脈が眠っていると言えそうだ。きっとこのような場所で自らの価値観が揺らいだり、脅かされたり、あるいはそれらを克服することで新たな意識が芽生えていく。こういった「揺らぎ」のポイントを日常の些細なレベルから抽出し、ツッコミやオチを添えて観客に提示する手腕は、まさにコメディ職人たちのお家芸と呼べるもの。『ビッグ・シック』と『ゲット・アウト』の作り手たちも、この角度の目線で世の中を見つめることに非常に長けた才能の持ち主と言えるのかもしれない。



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