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『ビッグ・シック』映画界に風穴を空けたコメディ出身者たちの視点とは?

(c) 2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ビッグ・シック』映画界に風穴を空けたコメディ出身者たちの視点とは?

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観客と演者との応酬が効果的なドラマを生む



 さらに『ビッグ・シック』は、スタンダップ・コメディの肝とも言うべき“観客と演者とのリアルな応酬”を効果的に織り込むことも忘れない。そもそも恋人たちの初めての出逢いもこのやりとりから始まるのだし、観客からのヤジにホリー・ハンターが烈火のごとく怒ってやり返す場面も中盤の見せ場となる。もちろん“応酬”はクライマックスにも大きく関わって最高のパンチライン(オチ)と心地よい後味をもたらしてくれる。この無くてはならない構造をきちんと意識的に用いるのもコメディ出身者ならではのこだわりと言えるだろう。



『ビッグ・シック』(c) 2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


 かくもコメディの世界を経由した新たな光は、映画人たちがこれまでなかなか見つけられなかった世界を実に活き活きと浮かび上がらせてくれた。ギャグで笑わせるのではなく、むしろ描かれるのは笑いそのもの。そこには「笑いたい」、「人を笑わせたい」という衝動に駆られた人たちの深い人間ドラマがある。そのひたむきさ、純粋さ。そして本作の核にはクメイルやアパトーを始めとするスタンダップ・コメディアンたちの魂が脈打っており、このスタイルに真摯に真正面から向き合って見せたからこそ、物語をこれほど有機的に動かすことが可能となったのである。


 コメディ勢は卓越したストーリーテラーであり、常識にとらわれない発想の自由さを持ち、なおかつ同じ題材を全く別の角度から切り込んでみせる大胆さを併せ持っている。マンネリ化を避けたいハリウッドではそうした変幻自在の才能を求める動きが一層加速していくことだろう。果たして今回の賞レースですっかり名の知られる存在となったクメイル・ナンジアニやジョーダン・ピールは、この先一体どのような風を吹かせてくれるだろうか。そしてさらなる新たな才能たちが、映画界に風穴を開け、観たことのない、感じたことのない作品へと我々をいざなってくれることに心から期待したい。



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。 



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ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ

(c) 2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

公式サイト: http://gaga.ne.jp/bigsick/

2/23(金)TOHOシネマズ 日本橋ほか全国順次ロードショー

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