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『ラッキー』友人たちの尊敬の念が結実した、名優ハリー・ディーン・スタントン(90歳)最後の主演映画

『ラッキー』友人たちの尊敬の念が結実した、名優ハリー・ディーン・スタントン(90歳)最後の主演映画

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名優の人格をスクリーンで再構築する試み



 『ラッキー』は90歳を迎えた老人の日常を描く。彼はメキシコ国境近くの砂漠の街に一人で暮らし、人々から「ラッキー」と呼ばれ慕われている。彼の1日はヨガの体操から始まり、ダイナーでコーヒーを飲みながらクロスワードパズルを解き、午後のひと時はクイズ番組を楽しみ、夜には昔馴染のあつまるバーでブラッディ・マリアを嗜む。


 そんな彼はめまいで倒れたことをきっかけに、ある恐怖に支配される。自分は明日にも死ぬかも知れない、と。己の死とどう向き合うのか?それがこの映画のテーマだ。文字で書き起こすとかなり地味な印象だが、この作品はなぜか不思議な豊かさと明るさに包まれている。それは、この作品を実現させるために集ったハリーを慕い、尊敬する盟友たちのお蔭だろう。


 『ラッキー』の企画はスタントンのアシスタントをつとめたことのある、ローガン・スパークスとドラゴ・スモンジャの2人から始まった。彼らは尊敬する師匠であるスタントンに捧げるために、彼へのあて書きで脚本を執筆したという。




 そのために、執筆中はスタントン本人への詳しい聞き取りが行われた。彼らは執筆が息づまるとスタントンを酒場へと誘いだし、昔のエピソードをねだって聞いていたという。劇中、スタントン演じるラッキーは若い頃、海軍の戦車揚陸艦に乗り込み沖縄戦に参加、神風特攻であやうく命を落としかけたと語る。これはスタントン自身の本当の体験であり、若い頃のエピソードとして語られる様々な挿話も、ほぼスタントンの実体験だ。スタントンは役者として、自らの体験を劇中で語り「演じる」。ラッキーという架空の人物は、スタントンの人生そのものを投影した存在としてフィクションの中で見事に息づいている。この作品は、彼の人格を劇映画という形式の中にあぶり出そうとしたユニークな試みなのだ。



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