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知る人ぞ知る名優、最後の主演作
ハリー・ディーン・スタントンと聞いて、すぐにピンとくる人は相当な映画通だろう。出演作の殆どは脇役で、あまり派手な印象を残す芸風ではない。エイリアンに殺されたり、警察官にハチの巣にされたこともあれば、イエスの弟子を演じたこともある。ひょろっとした枯れ枝のような立ち姿、落ち窪んだ眼窩が目を引く。おどおどして冴えない、でも忘れがたい印象を観客の脳裡に刻む。
彼の名を知らしめたのは1984年の『 パリ、テキサス』だ。人生で初めて主演した映画がカンヌ国際映画祭で最高賞を受賞、演技も絶賛された。1956年のデビュー以来60年にわたり、数多の映画で印象的な脇役を演じ、その一匹狼的なスタイル、生き様は、ショーン・ペンなど同業者から尊敬を集めた。
スタントンが亡くなったのは2017年9月、91歳。そして現在(2018年4月初頭)、彼の最後の主演作が日本で公開されている。『ラッキー』と題されたその映画は、稀代の名優の人生を締めくくるために用意された、類まれな作品であり、必見の傑作だ。