(c) 2016 FILM TROOPE, LLC All Rights Reserved
『ラッキー』友人たちの尊敬の念が結実した、名優ハリー・ディーン・スタントン(90歳)最後の主演映画
『ラッキー』あらすじ
神など信じずに生きてきた90歳のラッキーは、今日もひとりで住むアパートで目を覚まし、コーヒーを飲みタバコをふかす。いつものバーでブラッディ・マリアを飲み、馴染み客たちと過ごす。そんな毎日の中でふと、人生の終わりが近づいていることを思い知らされた彼は、「死」について考え始める。子供の頃怖かった暗闇、去っていったペットの亀、戦禍で微笑んだ日本人の少女――小さな街の人々との交流の中で、ラッキーは「それ」を悟っていく。
Index
知る人ぞ知る名優、最後の主演作
ハリー・ディーン・スタントンと聞いて、すぐにピンとくる人は相当な映画通だろう。出演作の殆どは脇役で、あまり派手な印象を残す芸風ではない。エイリアンに殺されたり、警察官にハチの巣にされたこともあれば、イエスの弟子を演じたこともある。ひょろっとした枯れ枝のような立ち姿、落ち窪んだ眼窩が目を引く。おどおどして冴えない、でも忘れがたい印象を観客の脳裡に刻む。
『ラッキー』(c) 2016 FILM TROOPE, LLC All Rights Reserved
彼の名を知らしめたのは1984年の『 パリ、テキサス』だ。人生で初めて主演した映画がカンヌ国際映画祭で最高賞を受賞、演技も絶賛された。1956年のデビュー以来60年にわたり、数多の映画で印象的な脇役を演じ、その一匹狼的なスタイル、生き様は、ショーン・ペンなど同業者から尊敬を集めた。
スタントンが亡くなったのは2017年9月、91歳。そして現在(2018年4月初頭)、彼の最後の主演作が日本で公開されている。『ラッキー』と題されたその映画は、稀代の名優の人生を締めくくるために用意された、類まれな作品であり、必見の傑作だ。