(C)2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『エイリアン』を生み出した男、その名はダン・オバノン
『エイリアン』あらすじ
地球への帰路を急ぐ宇宙船ノストロモ号に、謎の異星人(エイリアン)が侵入した。姿を見せない敵は本能の赴くままに一人、また一人と乗組員の命を奪っていく。未知の進化を遂げた生命体には人類の持ついかなる武器も通用しない。閉鎖された宇宙船内で、姿を見せぬ完全生物とだた一人生き残ったリプリーとの絶望的な闘いが始まろうとしていた……。
Index
『エイリアン』を思いついた男、ダン・オバノン
当たり前といえば当たり前だが、映画の元となるアイデアは、必ずしも映画監督が考えているわけではない。多くのケースにおいてはまず脚本や企画があり、プロデューサーが作品を任せるべき監督を選ぶ。『エイリアン』の場合も同様で、リドリー・スコットは既に製作が決まり脚本も完成していた『エイリアン』に監督として雇われたのである。
では、最初に『エイリアン』の物語を思いついたのは誰か? ダン・オバノンだ。ジョン・カーペンター監督のデビュー作となったカルトSF『ダーク・スター』(1974)の脚本をカーペンターと共同で書き、主要人物のひとりを演じ、特殊効果を担当した男だ。
『ダーク・スター』は閉ざされた宇宙船内に危険な宇宙生物が放たれるという『エイリアン』の原型のような内容だが、こちらの宇宙生物はビーチボールに足を付けただけのお粗末なもの。それもそのはず。『ダーク・スター』は、カーペンターとオバノンが学生時代の自主映画をセルフリメイクした超低予算のブラックコメディなのだから。
『ダーク・スター』は後に熱狂的ファンを獲得したものの、公開時に上映した劇場はわずか15館のみ。そしてたまたまハリウッドの小さな映画館で『ダーク・スター』を鑑賞したのが、『エル・トポ』などで知られる“カルト映画の鬼才”アレハンドロ・ホドロフスキーだった。当時、SF小説「DUNE(砂の惑星)」シリーズの映画化を目論んでいたホドロフスキーは、『2001年宇宙の旅』(1968)のSFX担当だったダグラス・トランブルに話を持ちかけたが、トランブルの態度が気にくわず決裂。たまたま『ダーク・スター』を観て、無名の青年だったオバノンに白羽の矢を立てたのだ。
『エイリアン』(C)2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
ところが、未曽有の超大作になるはずだったホドロフスキーの「DUNE」は道半ばで頓挫してしまう(後にデヴィッド・リンチが同じ原作で『デューン/砂の惑星』(1984)を監督)。ホドロフスキーと共に見た夢に破れてしまったオバノンは、ホドロフスキーが拠点にしていたパリからロサンゼルスに戻り、友人の家に転がり込む。
失意のどん底にいたオバノンだったが、一念発起して自分が監督できる低予算のSFホラーの脚本を書き始める。コメディを志向していた『ダーク・スター』があまり観客にウケなかったので、ならば思い切り怖がらせてやろうと、宇宙船内に怪物が現れるという同じモチーフをよりスリラー/ホラーに寄せた。
最初は「スペース・ビースト(宇宙の野獣)」というベタすぎるタイトルだったが、後にオバノン自身が『エイリアン』に改題する。「異邦人」「外部からの」という意味合いだった「エイリアン」という言葉に「宇宙の怪物」という意味合いを与えたのは100%オバノンの功績なのである。