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『エイリアン』を生み出した男、その名はダン・オバノン
オバノンからウォルター・ヒル、そしてリドリー・スコットへ
オバノンの脚本は、監督デビューして間もなかったウォルター・ヒルのプロダクションに買い取られ、ヒルや脚本家のデヴィッド・ガイラーによって大幅に改稿された。主人公をエレン・リプリーという女性にしたのも、宇宙船の乗組員にアンドロイドを加えたのもヒルたちのアイデアだった。
1977年に20世紀FOXが配給した『スター・ウォーズ』が大ヒット。各スタジオは慌てて二匹目のドジョウとなるSF企画を探し始め、たまたまFOX社の手元にあったのが、数年前にヒルから売り込まれていた『エイリアン』だった。FOX社は急遽、放置していた『エイリアン』の製作を決定する。決して大作ではなかったが、それなりの規模の予算が組まれ、もはや無名のオバノンは監督候補にすら挙がらなかった。オバノンにかろうじて与えられたのは“視覚デザインコンサルタント”という肩書きだった。
ここでようやく登場するのがリドリー・スコットだ。当時スコットは映画監督としては『デュエリスト/決闘者』(1977)しか発表していなかったが、イギリスではCMプロダクションを率いて数千本のCMを監督する注目株だった。スコット自身はSFにもホラーにも興味がなかったが、フランスのSFコミック雑誌“メタル・ユルラン”を読んでその魅力に開眼。さらに『スター・ウォーズ』の成功を目の当たりにしてSFジャンルに新たな可能性を見出していたところだった。
『エイリアン』(C)2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
スコットは脚本をもとに詳細なストーリーボードを描いてスタジオを説得し、まだ新人扱いながら予算の増額を勝ち取った。当人がSF映画をB級扱いしてきたこともあって、『エイリアン』ではあくまでも緻密なビジュアルに基づいた上質なA級スリラーを志向した。もはやオバノンが最初に作るつもりだった低予算SFとは、まったくの別物にスケールアップしていた。