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青春音楽映画の傑作『パティ・ケイク$』成功を導き出した必勝方程式とは

青春音楽映画の傑作『パティ・ケイク$』成功を導き出した必勝方程式とは

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〈バンド・グループもの〉の基本形は「あの傑作」



 〈バンド・グループもの〉の傑作は多い。ジャック・ブラックが小学生たちとバンドを組む『 スクール・オブ・ロック』(2003)や80年代のダブリンでバンドに熱中する少年たちを描いた『 シング・ストリート 未来へのうた』(2016)、ドキュメンタリーだが『 アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』(2009)。日本でも『 SR サイタマノラッパー』(2009)、『 リンダ リンダ リンダ』(2005)など。そんな多くの〈バンド・グループもの〉の規範とも言える映画こそ『 ブルース・ブラザース』(1980)だろう。


 今も続くアメリカの人気TV番組、サタデー・ナイト・ライブから生まれた大人気グループ「ブルース・ブラザース」を映画化、ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズなど名だたるアーティストも出演し音楽映画の金字塔として今も愛され続けている。同作は〈バンド・グループもの〉の必勝方程式そのものだと言っても過言ではないが、その理由の一つは、ある映画と同じ構造を有しているからだと筆者には思える。


 それは『 七人の侍』(1954)だ。黒澤明監督の代名詞とも言える『七人の侍』は、前半の「侍集めと村人の訓練」、後半の「野武士との戦い」という明確な二部構成となっているが、これは『メンバー集めと練習』⇒『ライブ本番』という〈バンド・グループもの〉の基本構造に置き換えられる。実際『ブルース・ブラザース』では前半の1時間半はかつてのバンドメンバーを集める過程(侍集結)や、再結成してもなかなか上手くいかないライブ活動(戦いの訓練)を描く。そして後半では、いくつもの障壁を乗り越えついにライブ(最終決戦)へと流れ込む。


 『パティ・ケイク$』も、この方程式を適用した基本構造を持つが、さらにライブシーンへの盛り上がりを後押しするもう一つの重要な要素がある。パティの人物造形だ。彼女は自分の体形を「ダンボ」とバカにされながらもアーティストになり、違う自分に「変身」する強い願望を持っている。そのため彼女はディズニー映画の『ダンボ』のごとく空を飛ぶ夢まで見る。そんな彼女は文字通り「変身」し、空を飛ぶため黒人たちがひしめくラップコンテストに仲間たちと乗り込んでいく。




 『七人の侍』でも三船敏郎演じる菊千代は、農民でありながら侍に「変身」することを夢見て、野武士との戦いに憑りつかれていく。映画において主人公が自己実現を果たすには「戦い」に身を投じなければならないが、その戦いへの必然性こそがドラマの駆動力となる。パティは、様々な逆境の中で戦いへの必然性を獲得していくが、その熱いドラマを生み出せた勝因は監督の出自を大胆に物語に取り込んだからだろう。



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