『パティ・ケイク$』あらすじ
主人公のパティは、掃き溜めのような地元ニュージャージーで、呑んだくれの元ロック歌手だった母と、車椅子の祖母と3人暮らし。23歳の彼女は、憧れのラップの神様O-Zのように名声を手に入れ、地元を出ることを夢みていた。金ナシ、職ナシ、その見た目からダンボ!と嘲笑されるパティにとって、ヒップホップ音楽は魂の叫びであり、観るものすべての感情を揺さぶる奇跡の秘密兵器だった。パティはある日、フリースタイルラップ・バトルで因縁の相手を渾身のライムで打ち負かし、諦めかけていたスターになる夢に再び挑戦する勇気を手に入れる。そんな彼女のもとに、正式なオーディションに出場するチャンスが舞い込んでくる――。
Index
『音楽映画』の熱いサブジャンル=〈バンド・グループもの〉
「音楽映画」と聞いた時、あなたはどんなタイプの映画を思い浮かべるだろうか。ミュージカルやライブドキュメント、既成の楽曲を監督のセンスで劇中にちりばめた作品をそう呼んでもいいかもしれない。筆者の場合は圧倒的に〈バンド・グループもの〉だ。音楽への情熱に燃える主人公がバンドやグループのメンバーを集め、立ちはだかる障害を乗り越え遂にライブへと漕ぎつける。そこに至るドラマが巧みにデザインされ、登場人物たちへの感情移入が頂点に達した時、ライブシーンは想像を超えた感動を与えてくれる。『パティ・ケイク$』は間違いなくそんな音楽映画の傑作だ。
『パティ・ケイク$』 © 2017 Twentieth Century Fox
主人公はニュージャージーのさびれた地方都市に住む23歳のパティ。父と離婚した母は無職で酒浸りのため、彼女はバーで働きながら病気の祖母の面倒まで見ている。そんなヘビーにささくれ立った日常を過ごすパティ。唯一、彼女を癒してくれるのがラップだ。友人たちとグループを組み、メジャーデビューし街を出たい…。『
8Mile』(2002)のエミネムを彷彿とさせる設定。ありがちと言えば、そうかもしれない。しかしこの基本設定をドラマの力でドライブさせ、見事にラストにまで持ち込んでいく。その成功は〈バンド・グループもの〉の必勝方程式によって導き出されたのだ。。