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まさかのトリロジーとなって日本再上陸する幻の傑作『ヘンリー・フール』巧みな語り口の肝となったハル・ハートリー流の“見せない”技術とは?

まさかのトリロジーとなって日本再上陸する幻の傑作『ヘンリー・フール』巧みな語り口の肝となったハル・ハートリー流の“見せない”技術とは?


映画に込められた「表現すること」の初期衝動



 『ヘンリー・フール』の魅力は、登場人物たちが「芸術」をめぐって運命をとことん翻弄される、そのユニークな物語性にある。


 ある日、どこからともなくふらりと街にやってきた怪しげな男、ヘンリー。「俺は物書きだ」と自称する彼のカバンには書きかけの大著「告白」がギッシリ。よくはわからないが、どうやら出版されれば全ての常識を覆す(本人談)衝撃作のようだ。


 そんな彼がゴミ処理場で働くサイモンに、ふとノートと鉛筆を渡したことから事態は動き始める。黙々とノートを文字で埋めていくサイモン。それはどうやら「詩」のようだ。スペルや文法、論理も無茶苦茶。だが、そんな彼の著述にヘンリーは文学的な才能を見出す。そうやって親身になってあれこれ指導するうちに、評判が評判を呼び、サイモンはやがてアンダーグラウンドから現れた時代の寵児となっていくーーー。




 一言で言えば「芸術への初期衝動」。何者でもなかった男が、善人か悪人かよく分からない謎の男を師と仰ぎながら、表現する喜びを目覚めさせる。その日常生活に芸術が芽生えていく神々しい過程が巧妙なストーリーとして織り成され、なおかつそこには情熱の煮えたぎるような暑苦しさは微塵もなく、むしろずっと眺めていたいような奇妙なほどの心地良さがある。


 この映画のことを考えている時、ちょうど思い出したのは、昨年公開されたジム・ジャームッシュの傑作『パターソン』だ。サイモンとパターソン、いずれも詩を書いている。それで大物になるとか大成するとかいう野望はなく、生きることに寄り添うように、彼らは詩を書く。ジャンルやテイストは全く異なるものの、両作はこの「日常生活に寄り添う芸術」を映し出している点で似た空気を感じる。もしかすると彼ら主人公たちには、ハートリーとジャームッシュ、ともに孤高のインディペンデント映画作家として名高い彼らの生き様が投影されているのかもしれない。



 ここで『パターソン』を引き合いに出したのは他にも理由がある。両作はどちらも「詩」を扱いながらも、映画としての見せ方がまるで違うのだ。『パターソン』ではノートに書き綴られた詩が「文字」と「朗読」となって、絶え間なく流れる水のごとく、清らかに、美しく表現される。さらに時を経るごとに推敲されて変化する過程すら惜しげもなく表現される。その生活に染み付いたリズムがいつしか我々を惹きつけてやまない映画の鼓動、あるいは呼吸となっていく。



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