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『ビートルジュース』初期バートンのアイデアと趣向が詰まった祝祭的な快心作

(c)Photofest / Getty Images

『ビートルジュース』初期バートンのアイデアと趣向が詰まった祝祭的な快心作

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手作り感と人間味のある特殊効果



 これらの自由奔放さが決してカオスに陥ることなく程よく成立している背景には、カルアーツ(カリフォルニア芸術大学)で学び、ディズニー在籍を経たティム・バートンの表現手法の多彩さがある。ストップモーション、ブルースクリーン、ドイツ表現主義、逆回し・・・などなど、一体この作品にはどれほどの技術や手法が詰まっているのだろう。


 当時、出演者たちは『ビートルジュース』の脚本の最終稿を読んでも、本作が一体どんな仕上がりを見せるのか、なかなかイメージが掴めなかったらしい。それもそのはず、あの世とこの世を行き来したり、ミニチュアの世界に入り込んだり、はたまた自らが相手を怖がらせようと、両手で己の口をおもむろに引き裂きながら”怖い顔”を懸命に体現しようとする姿なんて、演じる側がどれだけ想像力を働かせても、そう簡単に追いつけるものではない。


 さらにこの映画でバートンの特色として際立つのは、特殊効果をふんだんに盛り込んではいるものの、それらが決して時代の先端をゆく最新式ではないというところだ。むしろ手作り感がみなぎり、人間的な魅力が溢れ、最高に愛らしいローテク技術の数々が、キャラクターやストーリー展開と非常によくなじんで伝わってくる。



『ビートルジュース』(c)Photofest / Getty Images


 バートンによると、幼い頃から見て育った『悪魔の発明』(58)、『ほら男爵の冒険』(61)や、ハリーハウゼンが特殊効果で参加した作品の影響がここには詰まっているそうだ。確かにこれらの名作と同じく、バートンの特殊効果には、観客を「次はどんな手法で驚かせてくれるのだろう」とワクワクさせ、尽きることのないイマジネーションの泉が刺激的かつ心地よく沁み渡っていく魅力がある。


 観客のみならず、おそらくキャストやスタッフ、映画会社の首脳陣も含め、この映画の完成版に触れて初めて全体像を理解し、「ああ、こんな映画だったのか!」「バートンってやつ、すごいな!」と感嘆の声を漏らすことができたのではないだろうか。


 ティム・バートンの表現手法の豊穣さやオリジナリティを知らしめた本作は、製作費1,500万ドルながら北米で7,300万ドルを売り上げるヒットを記録した。これは1988年公開作の米興収ランキング(1位は『ロジャー・ラビット』)における第10位にあたる。かくなる長編第一作、第二作の成功があってこそ、彼の肩にはキャリア初期における大一番『バットマン』が託されることになったのである。


参考文献:

・「ティム・バートン 映画作家が自身を語る」(2011年/フィルムアート社)マーク・ソールズベリー著 遠山純生訳

・「ティム・バートン 鬼才と呼ばれる映画監督の名作と奇妙な物語」(2019年/玄光社)イアン・ネイサン著 富永和子、富永晶子訳



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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