1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. チャーリーとチョコレート工場
  4. 『チャーリーとチョコレート工場』ロアルド・ダールの世界観から沁み出したティム・バートンの作家性
『チャーリーとチョコレート工場』ロアルド・ダールの世界観から沁み出したティム・バートンの作家性

(c)Photofest / Getty Images

『チャーリーとチョコレート工場』ロアルド・ダールの世界観から沁み出したティム・バートンの作家性

PAGES


『チャーリーとチョコレート工場』あらすじ

失業中の父、母、そして2組の寝たきり祖父母に囲まれ、貧しいながらも人一倍優しく、家族と幸せに暮らすチャーリー。ある日彼は、ウィリー・ウォンカが工場長を務めている謎めいたチョコレート工場に招待される。工場に入ると、そこにはウンパ・ルンパやチョコレートの流れる川など、想像を絶する光景が広がっていた。



2005年製作の『チャーリーとチョコレート工場』は、映画としての至上の驚きと喜びが詰まった秀逸なファンタジーだ。ティム・バートンの映画にしてはいつものキュートでグロテスクな魅力は幾分抑えられており、その代わりに世にもカラフルな奇想天外さが画面いっぱいに広がる。それゆえバートン好きでもそうでなくても、幼い子供から大人までの幅広い年代が存分に浸り、笑顔になって楽しめる一作と言えるのではないだろうか。


原作は、誰もが良く知るロアルド・ダールの大人気児童書。映画を通じて「チョコレート工場」の物語に触れた人も、改めて原作を紐解くと、64年に出版されたこの本がどれほど素っ頓狂で、奇妙奇天烈で、創造性が無尽蔵で、その中毒性から一度読み始めると読者を掴んで離さない代物であるか分かってもらえると思う。


『チャーリーとチョコレート工場』予告


Index


71年版がお気に召さなかった原作者ダール



 実は、ティム・バートンも子供時代にこの本と出会い、大ファンになった一人だった。その後、この原作は1971年にメル・スチュアート監督によって『夢のチョコレート工場』として映画化され、公開時はそれほど商業的な成功を収めたわけではなかったものの、TV放送やビデオリリースなどを通じてじわじわと人気が広がり、いつしかクラシック・ファンタジーとして揺るぎない地位を確立させていった。


 これは原作者のダールにとっても喜ばしい現象のように思えるのだが、いろいろとリアクションを調べてみると実際のところ彼の反応は正反対だったようだ。


 それにはこんな理由がある。71年版の映画には、ダールの名前が原作者としてだけでなく脚本家としてもクレジットされているのだが、実際に製作を進めていく段階ではノークレジットで雇われたデヴィッド・セルツァー(のちに『オーメン』/76の脚本家として有名に)が映画向けの脚本へとリライトを施していったとか。


 そのため本作のストーリーは原作とやや異なる描写がある。さらに肝心なところでいわゆるハリウッド的な趣向や展開が優先され、はたまたジーン・ワイルダーが演じたウィリー・ウォンカのキャラクターが原作に比べるとやや落ち着いたテンションというか、人間味があるというか、ぶっとび方が抑えられた感じに仕上がっている。


 この一連の流れを受けて、当のダールは自分が原作に込めたヴィジョンがねじ曲げられたと感じていたようだ。もっとも生前のダールが自作の映画化作品に満足した試しなどほぼ皆無に等しいのだが。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. チャーリーとチョコレート工場
  4. 『チャーリーとチョコレート工場』ロアルド・ダールの世界観から沁み出したティム・バートンの作家性