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緻密なスパイ・スリラーを際立たせた、夫婦脚本家の脚色術『裏切りのサーカス』

緻密なスパイ・スリラーを際立たせた、夫婦脚本家の脚色術『裏切りのサーカス』


観客の想像力を刺激する、映画ならではの大胆な脚色



 結果、夫婦脚本家が全身全霊を込めて生み出した脚本はとてもユニークで、スリリングで、神がかり的な魅力を放つ代物となった。


 例えば、原作小説では一人の負傷した教師が寄宿学校に赴任してくるところからストーリーが始まるのだが、映画版ではTVドラマ版の脚色に倣うかのように、東側諸国で勃発した息詰まる極秘ミッションで幕を開けることとなる。


 面白いのはこの象徴的なシーンにおいて、いざハプニングが生じると建物の陰から男がヘッドフォンを外しながら(映画監督が「カーット!!!」とでも絶叫するかのように)飛び出してくるところだ。まるでセットに迷い込んだみたいなこの場面は、意図的な虚構性そのものが「映画」と「スパイの世界」とを不気味な符号でつなぐ、まさに映画版の導入部にもってこいの仕上がりになっている。これぞ映像でしか表現できない絶妙なニュアンスと言えるだろう。




 他にも、大胆に構成を入れ替えた部分もあれば、骨抜きにならぬ程度に簡略化されたところもある。が、素晴らしいのは、あれほどの原作の情報量を扱いながら、決して説明的にならず、込み入ったところほど映画の力を信じ、あえて映像の力だけで状況を伝えようとしているところ。そうした努力の甲斐あって、観る者に「その向こう側」を想像させながら物語を動かしていく信頼関係が、見事に形成されていたようにも思える。



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