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『ゴッドファーザー』大傑作への道程で、積み重なった偶然とは?

Copyright (C) 1974 by Paramount Pictures and The Coppola Company. All Rights Reserved. Restoration Copyright (C) 2007 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.TM, (R) & Copyright (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『ゴッドファーザー』大傑作への道程で、積み重なった偶然とは?


売れない作家が「カネのために書いた」大ベストセラー



 『ゴッドファーザー』がフランシス・コッポラの代表作であることは既に述べた。コッポラは『ゴッドファーザーPARTⅡ』『PARTⅢ』でも監督を務め、原作者のマリオ・プーヅォとともに共同脚本も手がけている。しかし、こと第一作『ゴッドファーザー』のストーリーに関しては、完全に原作者プーヅォが生み出したものだった。


 売れない小説を数冊出した実績しかなかったプーヅォは、無類のギャンブル狂で多額の借金を抱え、人生のどん底にいた。プーヅォは自著「The Godfather Papers and Other Confessions」でこう書いている。「私は45歳で、芸術家になろうとする努力にうんざりしていた。それに、親戚、金融会社、銀行、出版社、高利貸しに2万ドルの借金をしていた。今こそ大人になって、かつてレニー・ブルースから助言されたように身売りをする時だ。私は出版社に言った、いいだろう、マフィアの本を書くよ……」 つまり『ゴッドファーザー』の原作は、プーヅォの借金苦から生まれた苦肉の策だったのだ。



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 プーヅォの予想をはるかに超えて、『ゴッドファーザー』は世界的な大ベストセラーになるのだが、プーヅォ自身が認めているように、彼が決してマフィアの世界に通じていたわけではなかった。プーゾはイタリア系だがマフィアの故郷シチリア島の血統ではなく、両親はナポリからの移民だった(アル・カポネもナポリからの移民)。悪名高いニューヨークのヘルズ・キッチンで少年時代を過ごしたプーヅォだったが、その筋のチンピラの使いっ走りを何度かしたことがあっただけで、本物のマフィアの知人は一人もいなかった。


 小金を稼ぐために低俗なパルプ・マガジン用の原稿を書き散らしていたプーヅォは、マフィアに関する逸話を聞きかじっており、リサーチと想像力を駆使してマフィアの世界を書いた。マフィアの男くさい価値観やセリフを書く際には文豪ヘミングウェイを参考にし、映画でマーロン・ブランドが演じたファミリーの長、ドン・コルレオーネは、女手ひとつで家族を支え、プーヅォを犯罪の世界から遠ざけて育ててくれた母親をモデルにした。


 当時パラマウントの制作部長で『ゴッドファーザー』に深く関わったロバート・エヴァンズの自伝「くたばれ!ハリウッド」によると、コッポラが雇われた理由は「イタリア系だったから」に過ぎない。コッポラは有望な新人監督であったものの、それまでに一本もヒット作をものにしておらず、スタジオ側は大作を任せられる器ではないと考えていた。しかしパラマウントは当初、低予算で手早くギャング映画を作って儲けようと考えていた。時代物は製作費が高くなるからと、時代設定を現代にすることも検討されていたという。さらに大物監督に軒並み断られたことと、それまでのハリウッドナイズされたギャング映画の悪印象を避けるためにイタリア系の監督を探しており、これまた借金苦にあえいでいたコッポラに白羽の矢が立ったのだ。



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 ところが監督を引き受けたコッポラは「組織的暴力団の話よりも、ある家族の年代記として撮りたい」と言い出す。エヴァンズやパラマウントの首脳陣にしてみれば、手軽に儲けられる、大衆向けのギャング映画という既定路線から大きく逸脱していた。早く安く仕上げてくれる監督を探していたはずが、雇った監督が突然本気を見せ始めたのだ。。


 実は最初にオファーされた際、コッポラは“暴力とセックスを売りにしたくだらない大衆小説”として原作本を途中で放り出している(その感想は原作の一側面を正しく言い当てている)。しかし再度監督を依頼されて原作を読み返し、プーヅォが「父親と息子、権力とその後継者の物語」を描いてることに気付いて考えを改めた。安っぽいバカげた場面をすべて削除して、キャラクターと物語を絞り込む方針を立てたのだ。(プーヅォ本人の評価によると)“売れるために書いた”駄本に込められた真実の部分を、コッポラの慧眼がみごとにすくい取ったのだ。



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