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『ゴッドファーザー』愛のテーマ。そのルーツから探る、フランシス・フォード・コッポラの思いとは?
コッポラが思い描いた“コルレオーネ一家の故郷”シチリア
シチリア島には“コルレオーネ”という村が実在し、『ゴッドファーザー』ではヴィトー・コルレオーネの故郷という設定になっている。しかし『ゴッドファーザー』三部作はどれもコルレオーネ村では撮影されなかった。コッポラとスタッフはシチリア東部のリゾート地、タオルミーナの周辺を気に入り、タオルミーナや近隣の村であるサヴォカやフォルツァ・ダグロなどで撮影を行った。内陸で山に囲まれたコルレオーネ村とは違って、遠景に地中海を望む風光明媚なエリアだ。
映画である以上、ビジュアル的に“映える”場所をロケ地として選ぶのは当然であり、あくまでもフィクションである『ゴッドファーザー』で描かれる“コルレオーネ村”が、実際のコルレオーネ村と違っていても特に問題はない。ただ、興味深いことに、コッポラは「ここがオレたちの“コルレオーネ村”」と決めたタオルミーナ近辺の地域に強いこだわりを抱いていた節がある。そのこだわりを証明しているのが、『ゴッドファーザーPART III』に登場するヴィトー・コルレオーネの生家だ。
ヴィトー・コルレオーネの生家(のロケ地)。シチリア島屈指のリゾート地タオルミーナの近郊の村フォルツァ・ダグロにある。 撮影:村山章
『PART III』では、疎遠になってしまった妻ケイとの関係を修復しようとするマイケルが、ケイをシチリア島に呼び寄せて、自ら運転手となって島の案内をする。その時に(劇中の)コルレオーネ村を散策しながら、父ヴィトーの生家の前まで連れて行くのだ。ロケ撮影は前述の村、フォルツァ・ダグロで行われ、狭い路地にある一軒の家が“ヴィトー・コルレオーネの生家”として使われている。
この家は、『ゴッドファーザーPART III』で初登場するのだが、実は『ゴッドファーザー』でも『ゴッドファーザーPART II』でもヴィトーの実家として撮影が行われていた。ただし、最終的な編集バージョンから、当該のシーンがカットされてしまったのだ。
フォルツァ・ダグロを訪れてみるとわかるのだが、“ヴィトーの生家”に特筆するほどの特徴はない(ただ、見学にやってくるファンの目印になるように『PART III』の場面写真をプリントしたタイルが貼られている)。乱暴に言えば、似た景観であればどこで撮ってもそれらしく見せることはできただろう。にもかかわらず、コッポラは『ゴッドファーザー』から『PART III』に至る18年の間、同じ場所を“ヴィトーの生家”に見立て続けたのである。
三部作のすべてに登場するドン・トマシーノの屋敷のロケ地、スキアヴィ城。手前の車寄せはアポロニアが爆死した場所。 撮影:村山章
コッポラがその家に執着した真の理由はわからない。が、画面に映る映らないに関わらず、コッポラはシチリア島の同じ界隈を“コルレオーネ村”として撮り続けていた。つまりそれは、コッポラの脳裏に『ゴッドファーザー』の世界観にぴったりとハマる“コルレオーネ村”のイメージがハッキリと存在していた――ということではないか。そしてそこは苦くて甘い想い出の地であり、きっと「ゴッドファーザー 愛のテーマ」が流れていたに違いない。
文: 村山章
1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。
『ゴッドファーザー PART I <デジタル・リストア版>』
Blu-ray:2,381円+税/DVD:1,429円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2018年11月の情報です。
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