(C)1993 DORSET SQUARE FILM PRODUCTION AND DISTRIBUTION KFT
『ギルバート・グレイプ』巨大な母を演じた女優は天国へ、原作者の息子はスターになった
2018.10.08
出演作がことごとく傑作になる、新たな才能の誕生
公開から25年。こうして「親子関係」に思いを馳せる『ギルバート・グレイプ』だが、もうひとつ時を経て、浮かび上がってくる「親子」がいる。冒頭に書いた、原作者で脚本のピーター・ヘッジズである。
彼の息子の名は、ルーカス・ヘッジズ。現在(2018年10月)21歳にして、実力、勢いともにハリウッド若手俳優の中でトップランナーを走る存在である。何がスゴいかと言えば、出演作がことごとく高い評価を受け、実力だけでなく「強運」の持ち主だからである。
ルーカス自身がアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『 マンチェスター・バイ・ザ・シー』の翌年の2017年、出演した2作品『 レディ・バード』と『 スリー・ビルボード』がともにアカデミー賞作品賞にノミネート。2018年度も『Boy Erased』、『Ben Is Back』という主演作2本が賞レースに絡んできそうで、「ルーカスが出れば傑作になる」という法則が成り立っているのだ。
『 マンチェスター・バイ・ザ・シー』予告
ブロードウェイの舞台にも立ち、さらに演技力を磨いているルーカスだが、じつは『Ben Is Back』の監督は、父親のピーター・ヘッジズ。子供時代に父の監督作『40オトコの恋愛事情』(2007年)にエキストラ出演した経験はあるものの(本編ではカット)、監督と主演俳優として本格的タッグを組むのは初めてだ。父の演出の下、ドラッグに溺れ、リハビリを終えて帰宅する主人公を体当たりで、しかも繊細に表現するルーカス。その姿は、『ギルバート・グレイプ』のレオナルド・ディカプリオにも重なる。
ルーカスが『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でオスカーにノミネートされたのが20歳で、レオが『ギルバート・グレイプ』で同じ立場になったのが19歳のとき。俳優としての軌跡もどこかシンクロし、ルーカスは「ディカプリオの再来」などとも評された。
『ギルバート・グレイプ』の頃は、まだ生まれてもいない息子の未来など考えもしなかったピーター・ヘッジズだが、25年の時を経て、ジョニー・デップやレオナルド・ディカプリオと肩を並べる存在に成長しつつある息子を誇りに思っていることだろう。「騎士」も「太陽」も、現在のルーカスならどちらも名演するに違いないのだから。
文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。スターチャンネルの番組「GO!シアター」では最新公開作品を紹介。
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