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『ファントム・スレッド』PTAとダニエル・デイ=ルイスで作り上げたデザイナー、レイノルズ・ウッドコックとは

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『ファントム・スレッド』PTAとダニエル・デイ=ルイスで作り上げたデザイナー、レイノルズ・ウッドコックとは

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レイノルズの参考とされたデザイナーたち



 PTAとデイ=ルイスはレイノルズのモデルとして、何人かの実在のデザイナーを参考にしている。ひとりは、クチュール界の建築家と言われたクリストバル・バレンシアガ(1895-1972)。バスク系スペイン人である彼は1914年に起業し、当初はスペインの王侯貴族に取り立てられたが、30年代のスペイン内戦から逃れ、パリで本店を構えた。レイノルズの優雅な外見は、ハンサムであったバレンシアガから幾つもヒントを得ているという。


 二人目は第二次世界大戦後のアメリカで人気を得たチャールズ・ジェームス(1906-1978)。細いウェストを徹底して目立たせる懐古的なデザインで顧客の人気を得た人である。布地をふんだんに使い、ドレープをたっぷりとるデザインで知られ、布の厚みと裁断の立体性によって、ドレスそのものがまるで彫刻のように独立して床から立つことでも知られていたという。当然のことながらそのドレスは重く、締め付け、動きにくいものであったが、女性の肉体の凹凸を美しく見せることから、顧客は忍耐をもって積極的にそのドレスを着たという。2014年5月にはメトロポリタン美術館の服飾部門にてデザイナー、チャールズ・ジェームスの回顧展「Charles James: Beyond Fashion」が開催されている。




 これらのデザイナーの遺したパターンやドレスを参考に、衣装デザイナーのマーク・ブリッジスは『ファントム・スレッド』のために50点ものドレスを製作。ビンテージの貴重な刺繍やレースを使ったドレスはどれも見事で、特に、レイノルズが自身のサロンのマネキンとして雇う粗野な女性、アルマがドレスによって磨かれて、美しい女性へと変身していくための重要なフックとして映画の中に登場する。この仕事で、マーク・ブリッジスは第90回アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞している。


 一方、レイノルズが身に着ける素晴らしいスーツの数々は1906年創業のテーラーで、ロンドンのショッピングストリート、サヴィル・ロウに店を構える名店、アンダーソン&シェパードが手掛けた。柔らかいシルエットの「ソフトスーツ」で知られるこの店は、チャールズ皇太子を筆頭にハリウッドスター御用達の店。一度着ると、もう、他のスーツには戻れないと言われるが、映画の中ではレイノルズがふんだんにこの優雅なスーツを身にまとう。


 『ファントム・スレッド』のファーストシーンは、美術館のように美しく整った部屋の中で、レイノルズがグルーミングをする姿から始まる。髭を整え、シルバーグレイの髪の毛をすかし、シルクの靴下をはき、そしてアンダーソン&シェパードのスーツで仕上げる。この身支度の間のデイ=ルイスの身のこなしがとにかく滑らかで、一言も発しないにも関わらず、目が釘付けになってしまう。



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