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『暁に祈れ』徹底したカメラワークで観客を地獄の刑務所に叩き込む、言葉を失う凄まじい臨場感

『暁に祈れ』徹底したカメラワークで観客を地獄の刑務所に叩き込む、言葉を失う凄まじい臨場感

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 極悪人が待ち構えるタイの刑務所に、ヘロインとヤーバー(タイで出回っているドラッグ)所持の罪で収監されたイギリス人ボクサー、ビリー・ムーア。『暁に祈れ』はムーア自身の実際の体験記を基に描く獄中劇である。しかし、観客がビリーを介して体験するのは、従来の監獄ものとは異なる壮絶な地獄絵だ。まずは、さわりを紹介しよう。

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待ち構えていた暴力刑務所の凄惨



 入所直後、ビリーは全裸で検査を受け、口の中も調べられてとりあえず大部屋に収監される。そこでは囚人たちは折り重なるように寝そべっている。にも関わらず、隣の男がすでに息絶えていることも気づかない。死体が静かに運び出されていく。水汲み場で喧嘩になったことからビリーは独房に入れられる。独房を出た後、次に待っていたのは極悪人専用の大部屋だ。そこで手荒い小突きの歓迎を受け、興奮した皆の前で腕立て伏せ20回を命じられる。彼らはタイ語で絶叫しているので、ビリーにも観客にも理解不能だ。もちろん字幕での説明も無い。


 部屋の中がいっそう暗いのは、囚人たち全員が褐色の体中、顔中に思い思いのどす黒いのタトゥを掘っているからだ。夜、ビリーは見せしめとして1人の囚人が男たちにレイプされるのを目の前で見せつけられる。それが意味するのは、他言無用、絶対服従の2文字だ。翌朝、レイプされた男が首を吊っている。何事もなかったように皆が朝の身支度を始める。




 常態化しているのは暴力だけではない。麻薬所持を取り締まるべき看守が、囚人から賄賂を受け取る見返りに麻薬を提供している。看守の方が隠れて麻薬を売りつけて来たりもする。これを地獄と言わずして何と言う!?


 従来の監獄映画にも地獄は存在した。先輩が新入りを挨拶代わりに痛めつけ、刑務所カーストを体で学ばせる描写。容赦ない暴力で服従を強いる看守、やがて訪れる解放または脱出の瞬間。だが、『暁に祈れ』では、主人公は簡単に地獄から脱却できない。暴力がループのように繰り返され、ビリーは出口が見えない迷路の中を永遠に彷徨うことになる。



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