(C) 1983 Paramount Pictures. All Rights Reserved. TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
MTV時代を象徴する映画『フラッシュダンス』に意味を持たせた、ジェニファー・ビールスの英断とは
その時、ビールスは「ノー」と言った
『フラッシュダンス』マニアが最も感謝したい人物は主演のジェニファー・ビールスだ。オーディションの結果、最終選考に残ったライバルのデミ・ムーアとレスリー・ウィングを打ち負かし、アレックス役を手にしたビールスは、一気にスダーダムを駆け上がった。当然、シンデレラガール路線を歩むかに思われたが、高額のギャラで続編への出演を打診された時、意外にも、きっぱりと拒絶している。
その時、彼女はこう答えたという。「金儲けや売名には全然興味がないの。せっかくの儲け話が遠のいて、事務所は大慌てだったと思うけれど」。結果、続編は遂に製作されず、2001年に映画と同じジョルジョ・モロダーが作曲を担当したブロードウェイ・ミュージカルが幕を開けるが、不評のため閉幕。2008年にロンドンで幕を開けた新バージョンも、16週間公演が行われた後、予想よりも早くクローズしている。
『フラッシュダンス』(C) 1983 Paramount Pictures. All Rights Reserved. TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
もしも、ジェニファー・ビールスが出演を承諾し、続編が作られていたなら、どんな展開が待っていただろうか?昼間はピッツバークの製鉄所で溶接工として働き、夜は街のクラブで踊りながら、ダンサーになる夢を追いかけるアレックス。そんな彼女が工場長との恋を経て、遂にチャンスをその手に掴み取るまでの展開は、どう考えても浮き世離れしている。でも、そこに珠玉の音楽とエッジィな映像がタイミングよく被さると、観客はひととき現実を忘れて、あり得ない物語と知った上で、思う存分、短い夢に酔いしれることが出来るのだ。
そんな映画ならではのマジックは、出来れば1度だけに願いたい。結果的に『フラッシュダンス』の純度を高めることになった、ビールスの恐れ知らずの英断に、今は感謝するのみである。
文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)
アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。
『フラッシュダンス』
DVD:1,429円+税 発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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